海外情勢

WHOを検証する動き広がる 台湾参加に影響も

 【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)の年次総会では、WHOの新型コロナウイルス対応の検証を求める動きが広がった。米国は総会で、中国がウイルス確認当初、情報を隠蔽して感染を世界に拡大させたとして、WHOの責任を追及。審議が棚上げされた台湾の総会へのオブザーバー参加を求める意見も加盟国から相次いでおり、WHOの改革を求める機運が高まっている。

 ロイター通信によると、新型コロナの起源の調査やWHOの対応の検証を求める決議案が、採択にほぼ十分な116カ国の支持を確保した。同決議案は、欧州連合(EU)の主導で、日本など60カ国超が総会で共同提案していた。194加盟国の3分の2の支持を獲得できれば19日に採択される見通しだ。決議案を受けて、WHOのテドロス事務局長は18日、WHOの新型コロナ対応の検証を「できる限り早い適切な時期」に開始すると表明した。

 総会では、WHOの改革を求める声が相次いだ。アザー米厚生長官は同日、「少なくとも1つのWHO加盟国が新型コロナ発生の隠蔽を試みたことは明白で、透明性という義務をあざ笑った」と名指しを避けつつも、初動対応の誤りを隠蔽したとされる中国を批判した。その上で、「加盟国が誠実に行動しなかったときに、WHOは情報共有と透明性という中核的な使命を果たせなかった」と強調。隠蔽の問題などを中国に追及しなかったWHOの姿勢を問題視した。「WHOは変わらなければならない」と改革を要求した。

 ドイツの代表も総会で「WHOは外部干渉から、より独立しなければならない」と主張した。WHOは1月22、23両日の緊急委員会で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を見送った。中国が圧力をかけたとみられ、医療機関の検査態勢整備を促す宣言が遅れたことで感染拡大を招いたとされている。

 4年連続で実現しなかった台湾の総会へのオブザーバー参加を訴える意見も米国や欧州、中米の加盟国などから上がった。英国の代表者は総会で、「世界的な健康の安全性に関する議論は貴重な経験と専門知識から利益を得られるので、全ての(国の)行政が総会に参加することが重要だ」と台湾の参加の必要性に言及した。台湾と外交関係のあるハイチの代表も「WHOの議論に台湾を含めることを望む」と訴えた。

 スイス・ジュネーブの外交関係者は「昨年12月に新型コロナの人・人感染の恐れを警告していた台湾を総会に参加させ、WHO検証に加えることができれば、中国に配慮して対応が遅れたWHOの体質を変える好機になる」と指摘。「WHO改革の機運が高まることで、台湾の参加を求める声はより多くなるだろう」との見方を示した。

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