【パリ=三井美奈】欧州委員会は27日、新型コロナウイルス被害を受けた欧州連合(EU)の経済再生に向け、「復興基金」の草案を示す。独仏首脳が18日に発表した提案がたたき台になる。共同債務に反対してきたドイツが姿勢を一転したことで、EUが危機克服へと大きく動き出した。
独仏の「復興基金」提案は、EU名義で欧州委が金融市場で資金を借り入れ、感染被害国や産業に交付金として支給する仕組み。EUが共同で借金し、資金調達する新しい枠組みになる。目標規模は5千億ユーロ(約59兆円)で、EU域内総生産(GDP)の約3・5%に相当する。
メルケル独首相は18日、マクロン仏大統領とのテレビ記者会見で、復興基金は「欧州の結束を強めるもの。EUを未来に添った形にすべきだ」と訴えた。
EUは4月、総額5400億ユーロの支援策で合意したが、返済義務のある低利融資が中心だった。イタリアやスペインは「債務積み増しは、経済再生の足かせになる」と交付金方式を主張していた。資金調達をめぐっても、両国やフランスが共同債の発行を求めたのに対し、ドイツやオランダは「債務国の借金を肩代わりすることになる」と反対し、対立が続いていた。