新型コロナウイルス感染症治療のため世界で人工呼吸器の需要が高まる中、オーストラリアの研究者がプラスチックのバケツや自転車の車輪など身近な部品でローテクタイプの人工呼吸器を開発した。「医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なアフリカや太平洋の島国など途上国で役立ててほしい」と話している。
世界保健機関(WHO)によると、アフリカの公的医療機関で利用できる人工呼吸器はWHOに報告した41カ国で計2000台を下回る。価格が高いためで、太平洋諸国でも、バヌアツなど数台しかない国もある。
開発したのは、北東部クイーンズランド州のグリフィス大でデザインを教えるサム・カニング氏。パプアニューギニアで出産後、合併症に陥った女性の口に、地元医学生が5日間、袋を当てて息を吸わせて回復させたという話を聞き、最低限の機能でも救える命があることに気付いた。ふたをして管を挿したバケツを木製ケースに収め、外側の車輪を回すと内部のパドルが連動し、反復してバケツを圧縮。ポンプの役割を果たして一定のリズムで空気を送り出す仕組み。費用は200豪ドル(約1万4000円)ほどだ。
カニング氏は「ばかげたもののように見えるかもしれないが、きちんと空気を送ることができる」と話す。アフリカなど既にいくつかの国から関心が寄せられ、設計図を無償で提供する予定だ。(シドニー 共同)