海外情勢

印、出稼ぎ帰郷続出も要因か 新型コロナ 制限緩和で拡大

 インドで新型コロナウイルス感染者の増加が止まらない。5月16日に中国を抜いてアジア最多となり、同27日現在で15万人を超えている。インド政府は3月下旬から全土封鎖を続けているが一部で制限緩和に転じ、感染者増加に拍車を掛けた恐れもある。都市部で密集生活を送る出稼ぎ労働者の間で広がっている可能性もあるとみられている。

 首都ニューデリーのバラー・ヒンドゥ・ラオ地区。30万~40万人が住むとされる地区の入り口にトタンの壁が設けられ、脇の木陰で警察官2人が住民の出入りを監視していた。感染者が多いため、住民の外出が特に厳しく制限された「封じ込め地区」だ。昨年12月に隣接地域で少なくとも43人が死亡するビル火災があり、内部は違法な工場や倉庫になっていたことが判明した。犠牲者は東部ビハール州などからの出稼ぎ労働者で、ビル内で寝泊まりする集団生活を送っていた。バラー・ヒンドゥ・ラオ地区も同様の労働者が多いとされる。

 全土封鎖では当初、外出が厳しく制限され、経済活動はほぼ停止。都会の片隅で暮らす出稼ぎ労働者の多くが収入を失った。食料品も買えなくなり、帰郷が相次いだ。

 地元メディアによると、ビハール州に帰郷した8000人強を検査した結果、陽性率8%で国全体の4%より高かった。デリー首都圏からの帰郷者では26%で、首都圏の7%を大きく上回った。

 インド政府は5月20日、感染者が人口10万人当たり7.9人で世界平均の同62.3人より少なく、死者は同0.2人で世界平均の同4.2人より少ないと発表。翌日には隔離用に28万、集中治療用に3万超のベッドを用意したと発表し、医療態勢の整備も強調した。

 しかし医療現場の切迫も垣間見える。ニューデリーの男性は、せきが治まらない娘に検査を受けさせようとしたが、10以上の病院から検査能力の限界を理由に拒否された。複数の病院が「入院患者が優先」と説明したという。

 政府の制限緩和が、感染者増加に拍車を掛けた可能性もある。4月20日以降、封じ込め地区以外での経済活動を徐々に解禁したが、5月5日から1日当たりの新規感染者数が3000人を超えるようになった。同22日以降は6000人超に。人と人との接触機会が増えたことが一因と疑われている。

 保健当局者は「今後も感染者は増える。ウイルスとともに生きるために学ばなければならない。国を永遠に閉じ続けることはできない」と話した。(ニューデリー 共同)

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