タイの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)新規加盟が難航している。4月中に加盟申請する方針を決定するとしていたが、閣内で反対意見が台頭。農業などの業界団体も反発し、閣議決定が見送られた。申請の大幅な遅れは避けられず、加盟を後押しする日本にも誤算となった。
タイは2017年の米国の離脱表明後、加盟を本格検討し始めた。知的財産をめぐり厳格なルールを求めていた米国が抜け、産業界の懸念が和らぎ機運が高まった。また近隣のベトナムやシンガポールが先行して加盟し、輸出競争力を失うのを恐れたとされる。
タイ商務省は4月27日、TPP加盟で経済成長が見込まれ、投資が5%以上増えると結論付けるリポートをまとめた。しかし、翌28日の閣議には諮られなかった。
加盟すると、ジェネリック医薬品の販売が難しくなると懸念の声が上がり、アヌティン保健相が反対を表明。農業団体は特許権のある種子が利用できなくなると主張し、会員制交流サイト(SNS)で政府への抗議活動が広がった。
TPPは日本やオーストラリア、カナダ、ベトナムなど計7カ国が発効。チリ、ペルー、ブルネイ、マレーシアの4カ国は国内手続きが遅れている。
タイには自動車をはじめ日系企業が多く進出しており、日本は情報提供のため政府高官を派遣するなどし、加盟を全面支援してきた。今年8月ごろにメキシコで開かれる予定の閣僚会合で、タイとの交渉入りを決めたい考えだった。
外交筋は「短期的には加盟は難しい。ただ論点は既に整理されており、長期的に見れば実現するだろう」と話している。(バンコク 共同)