経団連は2日、定時総会を開き、事業方針や新しい役員の陣容などを決定した。新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う世界経済の停滞という中での開催となり、就任3年目となる中西宏明会長にとっては、厳しい環境の中で、2期4年の任期の折り返しとなる。経済界のトップとして、従来以上のリーダーシップが求められ、経団連が存在感を問われる局面を迎えた。
総会は感染防止のため、会場には中西会長、新任副会長らの限定的な出席で、そのほかの副会長らはインターネットを使ったオンラインで参加した。中西会長は「新型コロナウイルスとの共存が長期化することを覚悟し、早期の収束と強靱(きょうじん)な経済社会の構築に取り組む」とあいさつした。
例年、来場する安倍晋三首相もビデオメッセージにとどめ、「世界最大の財政政策、前例なき金融政策、コロナ時代の成長戦略のこれまでにない強力な3本の矢で、経済を再生させる」と強調した。
任期の折り返しに入った中西経団連にとっては、当初は想定しえなかった新型コロナウイルスとの闘いが、最大の課題となる。
感染拡大のリスクが続く中でも経済活動を再開、進展させる必要があり、そのためには非接触、リモートといったデジタル化の技術を基にした新しい社会システムが欠かせない。
もともと、中西氏はデジタル技術による社会変革である「ソサエティー5.0」を普及させ、社会課題の解決につなげることを強く掲げてきた。だが、現実には欧米のみならず、中国の後塵(こうじん)を拝している状況にある。
新型コロナ感染防止で、人との接触削減のため、外出自粛、在宅勤務に取り組まざるを得なくなったが、その結果、テレワークなどが一気に普及することになり、デジタル技術やそれを基盤にしたシステムの重要性が認識された。中西経団連にとっては、コロナ危機によってデジタル化を一気に加速するチャンスを得た格好だ。
しかし、大企業だけでなく、中小企業や地方自治体、教育機関などあらゆる組織や環境でデジタル技術が普及しなくては、社会基盤にはなりえない。デジタル化による社会変革を着実に進めることが、残り2年となった中西経団連の存在価値を高めることになる。(平尾孝)
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■中西経団連の今後の政策課題
ポスト・コロナ/新型コロナウイルスの感染防止と経済の活性化という対立する課題に取り組む
ソサエティー5.0/人工知能(AI)など革新的技術を活用し、データを軸に社会全体のスマート化を実現
SDGs/国連の「持続可能な開発目標」に合わせ、企業が社会的課題を解決し、収益をあげていくことを重視
デジタル化/デジタル革新である「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を軸とした経営改革の推進
気候変動対応/脱炭素社会に向け、温室効果ガスの排出削減や、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力発電所の再稼働などに取り組む
働きがい改革/新型コロナで導入が進んだ在宅勤務やテレワークなどの多様な働き方を進めるために、成果ややりがいを重視した働き方改革を推進