生かせ!知財ビジネス

次代を創造する子供たちへ INPITが学習冊子

 今こそ、豊かな夢を描き、ポストコロナ時代を創造していける子供たちを育てる時ではないか。特許庁傘下の工業所有権情報・研修館(INPIT)はこのほど、生徒・学生向けの学習用ブックレット誌「MIRAI 未来をつくる」を作成し、同館ホームページで公開した。ダウンロード先は、https://www.inpit.go.jp/jinzai/educate/kyouzai/index.html。

 内容の検討と執筆は、東海大の山田清志学長以下、学識経験者13人からなる「知的財産の“創造”に関する学習用資料検討プロジェクト」。起案者であるINPITの榎本吉孝・審議役・知財活用支援センター長は「検討開始は2年前。経済環境が変化し、事業の差別化につながる発想やビジネスモデルを生み出し、イノベーションへの結実が求められるようになった。それには論理性よりも、直感や感性に立脚した創造性が重要となる。将来を担う子供たちに理解してほしいと考えた」と熱く語る。

 同誌では冒頭、「未来を夢みて、創造ができるのは私たち人間だけです」と言い切る。原始人はなぜ火を使い耕作を始めたのか、暖かい寝床や空腹のない生活という将来を夢みたからだと説く。技術がいかに進歩しても、夢みることのないAI(人工知能)に創造はできないという論理だ。

 創造に必要な人間の能力として、構想力、観察力、突破力、共感力を挙げる。例えば観察力では「リアルをそのまま知覚する」重要性を指摘する。従来の教育で獲得してきたパターン認識力や論理的思考力などでかかったフィルター(思考の枠組み)を払拭することが本質をつかむ鍵になるという。内容のレベルは中学生くらいから。指導者用に活用の手引きを用意した。

 また、学習用ブックレット誌「未来をつくるあなたへ」を同時に公開。知財制度の基本となる創造的活動とその保護の重要性やルールについて平易に説明している。小学生高学年でも読める内容になっている。

 日本の創造力再生は大きな課題。それには企業や教育の場で多様な発想や創造性を尊重し、生かし、育むことが必要になる。このため内閣府知的財産戦略推進事務局では企業向け支援ツールである「経営デザインシート」の普及活動や「知財創造教育」の学習指導要領への組み込みなどを推進している。両誌もこの流れにある。

 コロナ危機で子供たちの学習機会は大きく減ってしまった。しかし半面で、コロナ危機は子供たちに来るべき社会への夢を抱かせ、創造への大きな刺激を与えているはずだ。子供たちは今、何を夢見て、何を創造しようと考えているのだろうか。同誌はそれを実現する一助となるはずだ。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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