海外情勢

米軍地位協定の破棄「停止」 フィリピン、同盟決裂は回避

 【シンガポール=森浩】フィリピンのロクシン外相は2日、米軍の国内での法的地位を定めた「訪問軍地位協定(VFA)」について、破棄するとした米国側への通知の効力を停止したことを明らかにした。地位協定は米比合同軍事演習の根拠ともなっており、同盟関係が決裂する事態はひとまず回避された。

 地位協定は1998年に締結された。軍事演習に参加する米軍関係者の入国審査の簡素化や、罪を犯した米兵について米国が一定の裁判権を行使できることなどが盛り込まれている。フィリピン政府は今年2月に破棄を通知しており、8月に失効する予定だった。

 ドゥテルテ大統領に近いデラロサ上院議員に対し、米国ビザが発給されなかったことへの対抗措置とされる。米国は、デラロサ氏が警察トップとして強権的な「麻薬撲滅戦争」を指揮した経歴を問題視したもようだ。

 フィリピン外務省は停止の理由を明らかにしていないが、1日付の文書で「地域の政治状況を踏まえた」と説明している。破棄の撤回ではなく、6月1日から「6カ月間の停止」としており、地位協定が失効する可能性は残されている。

 米国側は今回の決定を歓迎する意向を示している。地位協定の破棄通知をめぐっては、エスパー米国防長官が南シナ海情勢を念頭に「米国と地域の同盟諸国が中国に国際的規範を守るよう求める中、誤った方向に向かうものだ」と遺憾の意を表明していた。

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