新型コロナウイルス関連の倒産件数(負債額1000万円以上)が200件を超えた。業種別ではインバウンド(訪日外国人客)需要に支えられていた観光業や外出自粛のあおりを受けた飲食業が目立つ。アパレル大手のレナウンなど上場企業の倒産も出てきた。東京商工リサーチ情報部の原田三寛部長に倒産状況や今後の見通しについて話を聞いた。
エリアや業種問わず
--新型コロナ関連の倒産の特徴は
「エリアや業種を問わないのが大きな特徴だ。リーマン・ショックの時は金融危機で川上から影響が出てきて時間差があった。東日本大震災のときはサプライチェーン(供給網)危機で場所や業種が見えていた。コロナ危機は個人消費関連が多いが、業種を問わず、同時多発的に起こっている」
--具体的には
「例えば、観光業や飲食業、小売業の倒産が目立つが、結婚式場や葬儀会社など業種を問わない。中国から資材を調達できず、建築関連会社が倒産するケースもあった。個人向けを支える卸売業の倒産も多く、需要が動かず、生産調整が必要で、川下からも川上からも影響が出ている状況だ」
--倒産している企業は経営体力がないところが多いのか
「経営体力がなかった企業の倒産が多いが、これから安定企業の倒産が本格化する。コロナの影響で給与が減り、ボーナスを支給しない企業も出てくる。今後は代理弁済が増えるとみられ、家賃保証会社など不動産関連の倒産増加が懸念される」
--老舗企業の廃業・倒産も増えている
「従来のビジネスモデルを変えるのが難しく、後継者がいないケースも少なくない。コロナ危機を契機に廃業する企業も多く、残念だが、今後も増えるとみている」
--コロナの影響で、裁判所の手続きが止まっているとの話も聞く
「確かに申請件数が減っている。企業も弁護士と打ち合わせができず、準備が滞っている。手続きが正常化すれば、倒産件数は確実に増える。最大1年間の返済を猶予する特例措置や家賃補助、持続化給付金など政府による中小対策で数カ月の延命措置は図れるが、効果が切れる秋頃に倒産増加が顕在化するとみている。昨年は約8300件だったが、今年は1万件は超えると予測している」
出口戦略どうする
--政府の中小支援策への評価は
「短期的に効果はあるが、副作用もある。リーマン・ショック時に中小企業の返済を猶予する金融円滑化法が施行され、『ゾンビ企業』が延命した。これから課題に向き合うタイミングだったが、コロナによる特例措置で、先延ばしとなった。出口戦略をどうするかが今後の政府の課題になる」
--コロナの収束の兆しがなかなか見えない
「『東京アラート』が発令されるなど先行きに不透明感がある。今後の経済はワクチン開発が左右すると思う。最低でも1年はかかるだろう。この期間に電子化対応や自社の課題を解決しようとする企業も出ている。前向きに種まきの時間ととらえることも大事だ。『ニューノーマル(新常態)』に対応できる組織づくりも生き残りの鍵となる」(黄金崎元)