【ワシントン=塩原永久】米国の景気循環を判定する全米経済研究所(NBER)は8日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年2月をピークに米国が景気後退期に入ったと発表した。金融危機「リーマン・ショック」後の2009年6月に始まった景気拡大期は、史上最長の10年8カ月(128カ月)で終わった。今後の焦点となる米景気回復が遅れれば、コロナ禍からの世界経済の立ち直りがもたつく恐れがある。
著名経済学者でつくるNBERは、景気収縮の期間や幅広く経済活動が落ち込んだかなどを考慮し、景気後退を認定する。景気後退期に入ってから半年~1年以上、経過してから判定を下す場合が多い。
だが今回は、コロナの流行と感染防止策が「過去の景気後退とは異なる特徴と力学を伴う落ち込み」につながったと説明。急激な景気収縮が起きたため早い段階で景気後退を認定した。
記録をさかのぼれる1854年以降で、従来の景気拡大期の最長は1991年3月~2001年3月の10年(120カ月)。今回の128カ月は、この記録を塗り替えた。
NBERの判定では、四半期ベースで見た景気の山は19年10~12月期だった。感染を防ぐための営業規制や外出制限の措置により経済活動が停滞し、「雇用や生産の落ち込みが空前の規模」になったと指摘している。
米国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期比5・0%減と6年ぶりにマイナス成長となった。4~6月期にはマイナス20%前後に達するとの見通しがある。
一方、失業率は4月に14・7%と戦後最悪だったが、悪化が見込まれた5月は13・3%と改善。週間の失業保険給付申請件数は3月下旬以降、前週比で減少が続いており、雇用悪化が底打ちしたとの見方もある。
NBERは、今回の景気後退期が「以前の景気収縮よりは短期で終わる」可能性があると示唆している。前回の後退期は、サブプライム住宅ローン問題に端を発した07年12月~09年6月の18カ月だった。