海外情勢

新型コロナ失業での一斉帰国で混乱 比の出稼ぎ労働者、隔離施設一時飽和

 フィリピンから海外に出稼ぎしていた労働者が新型コロナウイルスの影響で一斉に帰国し、同国政府が頭を悩ませている。米欧や中東など感染者の多い国に行っていた労働者が失業し、相次ぎ帰国を強いられたため隔離施設が一時飽和状態になった。帰国者は年内に50万人に上るとの見通しもあり、感染第2波の引き金になる懸念は拭えない。

 フィリピンは「出稼ぎ大国」で、人口1億人超の1割を海外就労者が占める。

 政府は新型コロナの水際対策として外国人の入国を拒否しているが、自国民は帰国可能。これまでに滞在先の国で家政婦や建設工事、観光関連などの仕事を失ったフィリピン人が3万人以上戻ってきた。このうち約600人が帰国時の検査で陽性だったという。

 アニョ内務・自治相によると、年内に帰国する労働者は30万人とみているが、50万人との推計もある。帰国後は全員、2週間の隔離を義務付けられており、5月上旬には隔離施設が満員になったためフィリピン人の入国も1週間禁止した。

 フィリピン中央銀行によると、出稼ぎ労働者を含む在外フィリピン人からの送金額は昨年、335億ドル(約3兆6659億円)に上った。同国の国内総生産(GDP)の1割程度に相当し、経済成長に大きく貢献している。

 しかし感染者の多い国からの帰国や、実家までの移動で新型コロナの感染が広がるのではないかと警戒する向きもある。ゲバラ法相は自治体職員に対し、出稼ぎ労働者の帰省を拒んだ場合は刑事罰の対象になり得ると警告し、帰国者を迎え入れるよう要請した。(マニラ 共同)

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