国内

コロナでリサイクルに暗雲 「この状態がいつまで続くのか」と苦悩の表情も

 新型コロナウイルスの影響で、資源の再利用やごみ減量の取り組みが進まなくなっている。輸出できなくなった古着の回収をストップする自治体がある一方、飲食物の持ち帰りが増えるなどしてプラスチックごみは増加傾向に。専門家は「新型コロナをきっかけに、資源の循環について考えてほしい」と話している。(加納裕子)

 「家庭で保管を」

 兵庫県尼崎市は今月4日、家庭からの古着の回収を休止した。これまでは海外に輸出して現地で再利用されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で輸出ができなくなり、大量に滞留。4月頃から業者の相談を受けていたという。回収休止は8月末までで、資源循環課の担当者は「捨ててしまわず、家庭で保管しておいてほしい」と話す。

 一般家庭から回収された古着を選別して出荷している大阪府内の故繊維業者によると、国内で古着が流通するフリーマーケットも開催できなくなり、ストック量は通常の3倍以上になっているという。

 マレーシアに向けて古着を輸出している大阪府内の別の業者は「受け入れ側の企業がストップしている。商品は入ってくるが売ることができない。この状態がいつまで続くのか」と苦悩の表情を浮かべた。

 使い捨て容器へ

 食器を使うことで使い捨て容器を減らす取り組みも難しくなっている。

 スターバックスコーヒージャパンは2月末以降、店内飲食時にマグカップなどでの提供をやめ、使い捨てに切り替えた。同社は紙製ストローを導入するなどプラスチック容器削減に積極的に取り組んでいるが、広報担当者は「お客さまの安全を最優先し、感染拡大を防止するための一時的な措置」と説明。マグカップなどを入念に洗浄するよりも、店内の消毒など衛生管理を徹底したいという。

 外出自粛で急増した飲食物の宅配サービスや持ち帰りでもプラスチック製の使い捨て容器が増えたとみられ、大阪市では4月に分別回収した容器包装プラスチックが昨年同期より8・4%増加。担当者は「外出自粛の影響で3月から増えている」と話す。

 レジ袋は有料化

 コロナ禍でプラスチックごみが増加する中、政府は7月から小売店にプラスチック製レジ袋の有料化を義務付け、マイバッグの持参を呼びかける。

 米国では客が店員にマイバッグを渡して商品を詰めてもらうケースが多く、マイバッグを介して感染が拡大するとして禁止している州もあるが、経済産業省は「消費者が自分で袋詰めをすることで、感染拡大の懸念は解消される」として、レジ袋有料化の義務付けは予定通り実施する予定だ。

 大阪産業大デザイン工学部の花嶋温子准教授(廃棄物計画)は「古着を海外に輸出し、国内で循環させていなかったことが、新型コロナウイルスによって明らかになった」と指摘。一方で、ごみの回収に携わる人たちが生活に不可欠なエッセンシャルワーカーとして注目されたとし、「生活に必要なものがどこからきてどこへ行くのかを、多くの人が考えるきっかけになった。ものが循環する仕組みを考え続けてほしい」と話している。

 ごみ減らす方法

 ごみを減らして資源を有効活用する方法はリデュース(減らす)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)の3種類があり、3Rと呼ばれる。リデュースは、ごみの発生量を少なくすることをいい、マイバックを活用して包装やレジ袋を断ることなどがあてはまる。リユースは、フリーマーケットで古着を購入して着るなど、一度使用された商品を繰り返し使用すること。リサイクルは回収した製品を再資源化して新しい商品を作る。

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