海外情勢

アグラにガンジス上流の水 印首都の排水で水源汚染深刻化

 観光名所として知られる世界遺産、タージマハルがあるインド北部アグラの街を、約130キロ離れたガンジス川の水で潤すプロジェクトが進んでいる。水源の汚染が深刻化したため、ガンジス川から水を引き込むという一大構想。約289億ルピー(約407億円)に上る総事業費のうち、約85%を国際協力機構(JICA)が円借款で供与し、来年12月の完成を目指している。

 「これは全てガンガージャル(ガンジス川の水)です」。アグラ市内にある浄水場で、管理責任者のピーユシュ・パンカジさんは、コンクリート製の溝から勢いよく流れ出てくる透明な水を指さした。

 浄水場に流れ込む水は毎秒4000リットル以上。ガンジス川上流から運河を伝わってきた水は、北部ウッタルプラデシュ州ブランドシャヘルでパイプに取り込まれ、アグラまで運ばれてくる。

 約170万人が住むアグラには、ガンジス川最大の支流であるヤムナ川が流れ、飲み水などの水源となってきた。だが、上流にある首都ニューデリーから生活排水が流れ込み、工業団地から十分に処理されていない汚水も排出され、水質汚染が進んだ。

 パンカジさんは「水道水は黄色く濁り、(発がん性物質の)トリハロメタンなどが混ざっていた」と話す。ヒンズー教徒にとって「聖なる川」のガンジス川。近年は汚染が深刻化しているが「上流はまだ水質がいい」(パンカジさん)という。

 ヤムナ川沿いの集落に住むマハリシュ・ジョシュさんは「毎日ペットボトルの水を買っていたが、今は水道水を沸かして飲んでいる」と笑顔を見せた。2007年に始まった事業は、パイプが破損して水が届かないといったトラブルも頻発したが、供給エリアは徐々に拡大。計画の9割が完成し、アグラの8割以上の世帯で、ガンジス川の水が使われている。

 JICAインド事務所の高田周作さんは「日本の支援でアグラに安全な水が供給される意義が大きい」とし、水環境の改善に期待を寄せている。(アグラ 共同)

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