国内

旅行消費回復へ地元住民に照準 宿泊費補助や安全策を徹底

 新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ旅行消費を回復させようと、各地の自治体が地元住民に照準を合わせている。宿泊費用の補助には申し込みが殺到する人気ぶりで、受け入れ現場も対策の徹底で安全をアピールする。一方、訪日客の回復は遠いが、海外では国際観光の再開を目指す動きも目立ってきた。

 魅力再発見の機会

 自治体の宿泊補助で目立つのが「県民、県内限定」。都道府県をまたぐ移動は19日から解禁されたが、石川県の担当者は「まだ県外客は積極的に呼べない」と話す。

 石川県は県民向けに宿泊費を1泊最大1万5000円補助。6万件を超える申請があった。宿泊費に応じて補助額が増えるため、高級な宿が人気という。

 沖縄県は旅行会社でツアーを予約すると、宿泊費などを最大1万5000円割り引く事業を展開している。7月末を期限に5億円を用意したが、6月中にほぼ使い切るペースという。

 秋田県は5000円分の宿泊券を2500円で販売。1人5枚まで購入できる。30万枚に対し約45万枚の応募があり、県担当者は「想定以上で、県内観光業の4~5月の損失を補える。県民にも、地元の魅力を再発見するきっかけにしてほしい」と語る。

 「当バスは消毒、乗務員のマスク着用を徹底しております」。今月13日、小雨の降る東京駅。旅行会社「はとバス」がツアーを2カ月ぶりに再開、乗客9人が乗り込んだ。

 屋根のないオープンバスで約1時間、東京タワーや銀座を下車せず巡る。定員は席数の半分に限定。都内のパート、林きみ江さん(60)は「遠くは旅行しづらいが、普段立ち寄らない東京の観光地は新鮮」と喜んだ。

 群馬県草津町の草津温泉観光協会は、温泉を板でかき混ぜて冷ます「湯もみ」を5月22日に再開。観客同士が1メートル以上の距離を取れるよう、入場は70人までと平時の3割以下。マスクや手指の消毒、検温もしてもらう。

 以前は首都圏の客や訪日客が多かったが、担当者は「県内ナンバーの車が増えた」と客層の変化を感じている。

 海外では緩和も

 世界的には、観光客を含め、国外からの入国制限緩和に踏み切る国もある。新型コロナが流行したイタリアは今月3日、欧州連合(EU)諸国との国境封鎖を解除。15日にはフランス、フィンランドなどもEU域内との渡航制限を緩和した。

 EUは観光産業が域内総生産(GDP)の1割程度を占め、関連分野も含めると2600万人が従事。夏のバカンスシーズンに向けて観光客を呼び戻したい考えだ。

 インド洋の宝石と呼ばれ、観光業が経済を支えるモルディブの政府観光局は、7月から日本を含めて段階的に観光客を受け入れると発表。エジプトも観光地などの空港封鎖を解除していく。

 一方の日本。水際対策として、計111の国・地域を対象に入国を拒否している。政府はまず、ベトナムなど4カ国を対象に、ビジネス関係の入国を順次認める方針だが「(観光客は)ある程度先になる」(茂木敏充外相)見通しだ。

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