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中国、景気回復ペースは緩やか

 中国では「武漢封鎖」などの強力な新型コロナウイルス対策により、3月中旬までに感染拡大の抑制に成功した。鉱工業生産は、2月にコロナ危機前の75%程度に縮小したあと、操業再開に伴い、3月から持ち直しに向かった。4月にはほぼ危機前の水準を回復し、一足早く景気は回復に向かっている

 しかし、5月の小売売上高の水準は、コロナ危機前の9割強にとどまっている。感染第2波に対する行政、住民、そして企業の警戒感が依然くすぶっており、人と人の接触の多い実店舗での買い物や、娯楽などのサービス消費が従来の水準に戻るには時間がかかり、雇用・所得環境の悪化もあって、消費全体の回復が遅れるおそれがある。

 順調に持ち直したかにみえる生産についても、1月末の春節(旧正月)や2月の操業休止で積み上がった受注残への対応のほか、マスクや医療機器などの防疫関連財や、テレワークで需要が増加したパソコンなどの輸出増により、一時的に押し上げられた側面もある。海外では3月以降、欧米だけではなく中南米などでも感染が拡大し、経済活動は大きく落ち込んだ。中国の5月製造業購買担当者景気指数(PMI)は、3カ月連続で景気拡大・縮小の目安である50を上回ったものの、海外受注は3月に改善した後、再び大きく低下した。

 国内消費の持ち直しの遅れや外需の落ち込みにより、生産の持ち直しが鈍化する懸念が残り、景気の回復ペースは緩やかなものにとどまるとみられる。(編集協力=日本政策投資銀行)

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