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河井夫妻、地盤外に手厚く現金配布か 「広島3区」分の2・4倍

 昨年7月の参院選をめぐる買収事件で、公職選挙法違反容疑で逮捕された前法相で衆院議員、河井克行容疑者(57)と妻で参院議員、案里容疑者(46)は、広島県内の首長と地元議員計40人に現金1680万円を提供したとみられる。うち克行容疑者が選出された衆院広島3区内の15人への総額は490万円にとどまり、約2・4倍の1190万円が他地域に配布された。東京地検特捜部などは、夫妻が地盤のない地域に手厚く配り、票の取りまとめの依頼に奔走した可能性もあるとみている。

 《重点地区は安芸高田市、安佐(あさ)北区、安佐南区沼田町、呉市、福山市》。参院選終盤の昨年7月17日、案里容疑者は「アンジー」の登録名で、無料通信アプリ「LINE(ライン)」の陣営内グループにこんなメッセージを送信した。

 安芸高田市と広島市安佐北区・安佐南区は克行容疑者が地盤とする広島3区内。案里容疑者は周囲に、克行容疑者について「選挙に弱い」と漏らしていたといい、地盤を固める狙いがあったとみられる。

 広島市議で現金を配布された疑いのある13人のうち、6人が安佐北区と安佐南区の選出。安芸高田市でも当時県議で現市長の児玉浩氏のほか、市議3人にも現金を渡すなど、広島3区内で細かく気を配っていたことがうかがえる。

 だが、永田町関係者はこう語る。「参院選は県内全体が選挙区。夫妻はこれまで安佐南区を中心に活動してきただけに、地盤の外で票を集めるため、いっそう現金に頼ったのだろう」

 今回、現金を配布された疑いのある県議14人のうち、克行容疑者の地盤のない広島3区外の選出議員が11人を占めたのだ。

 県内では自民党岸田派(宏池会)の勢力が強く、昨年の参院選では、多くの自民党系地元議員が案里容疑者の競合候補だった溝手顕正(けんせい)・元国家公安委員長を支援していた。

 ある県政関係者は現金を配布された県議について「夫妻と交流が少ないはずの人も含まれているが、多くはかつて案里容疑者と同じ会派に所属するなど『どちらかといえば親しい』県議だ」と語る。

 溝手氏は平成25年の参院選で、2位当選の2倍以上の52万票超を得て圧勝するなど、強い支持基盤を持っていた。克行容疑者らが“現金攻勢”で広島3区外の溝手氏の支持基盤を切り崩そうとしたとみられる。

 広島3区外の配布先をめぐっては、首長や議員計40人の中で2番目に多い150万円を受領し、辞職の意向を示した三原市の天満(てんま)祥典市長(73)は、克行容疑者のブログに親しげな写真が掲載されるほど「熱心な支持者」(陣営関係者)だった。克行容疑者が同市生まれとはいえ、夫妻にとって地盤外の貴重な存在だったようだ。

 40人の中で最高額の200万円を受け取った疑いのある元広島県議会議長の奥原信也県議(77)も選挙区は広島3区に含まれない呉市。広島市議13人の中で最高額の70万円を受け取ったとみられる市議も広島3区外の選出だった。

 一方、県内で広島市に次いで人口の多い福山市を地盤とする現職議員は、広島3区外でありながら、現在判明している配布先には含まれていない。ただ、関係者によると、元県議2人と、選挙時に案里容疑者の福山事務所を貸すなどした支援企業の代表の計3人にそれぞれ60万円が渡った疑いがあるという。

 当時の陣営関係者は「案里容疑者は福山市で公示当日に集会を開くほど力を入れていた。全面支援してくれる現職県議がいなかったので、元職の力を頼ったのかもしれない」と話す。

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