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IR整備 コロナで逆風 海外事業者が撤退 早期開業に赤信号

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備に新たな逆風が吹いている。新型コロナウイルス感染症の流行で海外事業者が撤退するなど、誘致を目指す自治体の準備が停滞。国民のカジノ反対論、IR汚職事件に重なる難題で、2020年代半ばの開業を目指す計画が大きく狂う可能性もある。

 自治体の準備停滞

 「日本におけるIR開発の枠組みでは、私たちの目標達成は困難だ」。横浜市のIR参入に意欲を示していた米カジノ大手のラスベガス・サンズは5月、突然の撤退を表明した。

 ラスベガスやマカオ、シンガポールなどのカジノは新型コロナで次々と営業が停止。各国でIRを手掛けるサンズの1~3月の売上高は前年同期から半減した。

 この先も経営環境は不透明な上、日本のIRの事業計画は当初の有効期間が10年で、その後5年ごとに更新する必要があるなど制約もあり、巨額投資にはリスクがあると判断したとみられる。

 香港のギャラクシー・エンターテインメント・グループも1~3月の売上高が6割減。同社は「日本市場への参入に万全の体制で臨む」としつつ「コロナが業績に大きな影響を与えるのは間違いなく、その期間の予想は不可能」(ルイ・チェ・ウー会長)としている。

 整備に名乗りを上げている自治体も余波を受けている。

 大阪府・市は26年度末を予定していた全面開業が1~2年ずれ込むとの見通しを示す。有力候補の米MGMリゾーツ・インターナショナルの1~3月の売上高は3割減少。「事業者の投資余力が落ちており、開業時期を見定める」(松井一郎市長)ためで、事業提案書の提出期限を7月から半年ほど延ばす。

 横浜市は、IR事業の実施方針や事業者向けの募集要項の公表を6月から8月へ。和歌山県は、11月としていた事業者選定を来年1月ごろに先送りにした。長崎県も、早ければ今春に始める予定だった事業者公募に着手できていない。

 根強い反対論に汚職

 IR整備はもともと課題が多い。安倍政権は観光客が増えるといった経済効果を強調するが、世論調査では反対が根強い。ギャンブル依存症、治安や渋滞など生活環境の悪化への懸念が理由だ。

 昨年12月には、秋元司衆院議員がIR汚職事件で逮捕され、政府は担当職員らが業者と接触する際のルールを作るため、整備地域の選定に関する基本方針の決定を先送り。そこに、コロナ禍が起きた。

 IRに詳しい三井住友トラスト基礎研究所の大谷咲太主任研究員は「各国のIR事業者は手元資金が減ったほか、想定していなかった新型コロナのリスクが認識され資金調達が難しくなっており、日本参入を見送るケースが続く可能性がある」と指摘。「事業者は事業モデルや資金調達の方法を練り直す必要があり、余裕のある日程にすべきだ」として、自治体からの計画受付期間の延期が必要と指摘した。

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