海外情勢

北朝鮮に第2の飢餓時代到来か 正恩氏が直面するコロナと経済のジレンマ

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は2日の党政治局拡大会議で、新型コロナウイルスについて周辺国で感染の再拡散が続いていると指摘、「拙速な防疫措置の緩和は、取り返しのつかない致命的な危機を招く」として、非常防疫体制のさらなる強化を指示した。朝鮮中央通信が3日、報じた。

 北朝鮮は1月から中国との国境を実質封鎖する厳しい防疫措置を続け、経済が逼迫(ひっぱく)しているとされる。正恩氏は、権力基盤である首都、平壌の市民らの生活改善策も打ち出しており、防疫と経済策の間で大きなジレンマを抱えている。

 「人民と血の涙を共に流し、草のかゆも一緒に食べた」。党機関紙、労働新聞は6月末、失政と飢饉(ききん)により数百万人が餓死したともいわれ、北朝鮮で「苦難の行軍」と呼ぶ1990年代後半の食糧難時代に、正恩氏が父、金正日(ジョンイル)総書記に従って貧しい食事で耐え忍んだという逸話を紹介した。

 正恩氏のスイス留学時代と重なり、創作とみられるが、こうした逸話を宣伝せざるを得ないほど、北朝鮮の経済難は深刻だと分析されている。優先されてきた平壌市民への食料配給も春以降、滞っていると伝えられ、韓国の研究機関は「第2の苦難の行軍」が到来し得ると警告する。

 国境封鎖で対中貿易が激減したのが要因だ。中国の統計では、5月の中朝貿易総額は前月より増えたものの、前年同月比では77%減の低水準にとどまる。正恩氏は6月の党政治局会議で、平壌市民の生活向上に取り組むよう指示し、内閣は生活用水や野菜供給の改善策を打ち出した。水や食料の供給さえ問題があるというのだ。党や軍幹部、エリートが集まる平壌の市民の不満は権力基盤を揺るがしかねず、指示は正恩氏の危機感の表れとみられる。

 拡大会議では「対外事業に関する重要問題」も取り上げたとするが、詳細は公表しなかった。同通信は、開城(ケソン)の南北共同連絡事務所の爆破など強硬措置の後、軍事的措置の保留を決めた対韓国問題に一切、触れなかった。正恩氏の関心がコロナと経済に集中していることの裏返しといえる。

 正恩氏はウイルスの国内侵入を「徹底的に防いだ」と主張しながら、防疫の緩みを厳しく批判した。北朝鮮は、国内の感染拡大を故意に伏せてきたとみられているが、最高指導者自身は現状を深刻に受け止めていることを物語っている。

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