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地域経済悪化の長期化懸念 コロナに豪雨被害が追い打ち

 日本銀行が9日示した地域経済報告(さくらリポート)では、日本の地域経済がリーマン・ショック以来の危機にさらされていることが確認された。特に雇用・所得と個人消費が受けたダメージは壊滅的だ。緊急事態宣言が解除され、経済は徐々に回り始めたが、足元では、九州を中心に豪雨災害が拡大。新型コロナウイルスに加え、自然災害が地域経済の先行きに影を落としている。

 「工場稼働率の低下を受けて派遣社員の契約更新を見送ったほか、正社員は雇用調整助成金を活用して一時帰休を実施した」(愛知県の輸送用機器)

 「派遣労働者は半分を雇い止めにせざるを得なくなった」(石川県の繊維)

 さくらリポートでは、やむを得ず、非正規従業員から人員削減に踏み切る企業の声が並んだ。コロナショックによる企業の業績悪化は着実に雇用・所得をむしばみ始めている。

 東京商工リサーチによると、今年上期(1~6月)に早期・希望退職を実施した上場企業は41社を数え、昨年1年間の35社をすでに超えた。このうち総合免税店のラオックスはコロナ禍の影響を受け、計390人の人員削減に踏み切った。

 雇用・所得の悪化は個人消費の冷え込みにつながる。生活に密着したスーパーの経営者からは「今後はよりリーズナブルな価格の商品を積極的に投入していく」(東京都)、「ポイント還元の拡大や値引きなどの需要喚起策の実施を検討している」(広島県)といった声が寄せられた。

 観光業にとっても、今年は厳しい夏となりそうだ。新型コロナの感染再拡大で、都道府県をまたぐ移動は自粛ムードが広がる。比較的感染者数が少ない東北地方でも、毎年300万人近い観光客が訪れる青森ねぶた祭など、夏祭りが相次いで中止に追い込まれた。

 政府の観光支援策も開始時期が定まらない。「効果を実感できるのは当地の需要期である7~8月を過ぎてからになってしまうのではないか」(北海道の宿泊施設)との懸念も上がる。

 個人消費を下支えしてきた訪日外国人客の需要を失ったことも痛手だ。訪日客は昨年3188万人を記録したが、コロナ禍で渡航制限が全面解除されることは当分望めない。

 足元では、梅雨前線が引き起こした豪雨被害による経済の下押しが懸念される。被害は九州全域のほか、岐阜、長野両県などに広がっている。

 9日朝の支店長会議で、黒田東彦(はるひこ)総裁が「広範な地域で甚大な被害が生じている」と述べ、地域経済への影響に懸念を示した。(米沢文)

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