国内

デジタル課税、年内合意暗雲 18日のG20で議論、米欧の溝深く

 巨大IT企業などの行き過ぎた節税を防ぐ「デジタル課税」の国際交渉をめぐり、対象企業の拠点が国内になくても課税できるルールの導入について、目標とする年内合意の見送りが浮上していることが分かった。グーグルやアップルなど自国企業への狙い撃ちと反発する米国と、巨大ITへの規制を強めたい欧州の溝が埋まらず、巨額の税逃れへの対策が宙に浮く可能性が出てきた。

 デジタル課税は、18日に開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁のテレビ会議でも議論するが、協議継続の確認にとどまる見通しだ。秋に米大統領選を控え、自国第一主義を鮮明にするトランプ政権は、新型コロナウイルスへの対応を優先するためとして協議の一時中断を求めたほか、10日には独自課税に動いたフランスへの報復措置を決めるなど揺さぶりを強めており、年内に協議が進展する見通しは立っていない。

 税逃れ対策では、法人税の国際的な最低税率を設け、企業が税率の低い国に利益を移して節税するのを防ぐことも協議している。税収増を見込み、各国の意見が一致するこの分野に絞って年内合意する可能性もあるが、巨大ITなどは税制の網をかいくぐり、世界で年間10兆円の納税を逃れているともされ、不満を強める欧州はデジタル課税を含めた年内決着の旗を降ろしていない。

 デジタル課税では、経済協力開発機構(OECD)が示した「売上高が一定以上の企業で利益率10%超の部分に課税する」との案などが検討されている。しかし米国はこれまでにも、納税を企業の判断に委ねる「選択制」の提案などルールの骨抜きと取られかねない動きを見せている。

 日本政府の関係者は「大統領選までは何も動きそうにない。選挙後2カ月間でまとめるのはさすがに不可能だ」と頭を抱える。

【用語解説】デジタル課税

 「GAFA」と呼ばれる米グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コムをはじめとする巨大IT企業を念頭に、過度な節税を防ぐために検討されている国際的な法人税制。現行ルールでは工場などの拠点が置かれていない国は企業に原則課税できず、インターネット上でサービスを展開する巨大ITへの対応が不十分との批判があった。経済協力開発機構(OECD)が主導し、日本を含む約140カ国・地域が年内合意に向けて協議している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus