海外情勢

レバノンの通貨大幅下落 財政悪化で信用失墜、コロナが追い打ち

 中東レバノンの通貨が大幅下落し、経済危機が悪化した。困窮していた財政に新型コロナによる不況が追い打ちとなった。目立つ産業がなく輸入に頼る同国では、物価が高騰し自殺者や犯罪が増加、反政府デモも継続し、混乱が加速している。

 通貨レバノン・ポンドはこれまで安定していたが、財政悪化に端を発する昨年10月からの反政府デモや、今年3月のデフォルト(債務不履行)で通貨の信用が失われた。新型コロナでの失業増もあり、下落に歯止めがかからなくなった。

 昨年10月まで1ドル=約1500レバノン・ポンドだった交換比率は、デフォルト後の今年4月に約3600レバノン・ポンドに下落。地元紙デーリー・スターによると、闇市場では2日に一時、1万レバノン・ポンド近くまで急落した。

 輸入に頼る生活物資は急騰し、困窮者が増加。軍は兵士の食事を肉抜きにして経費を削減している。在レバノン日本大使館などによると、経済苦とみられる自殺者が出ているほか、殺人が昨年と比べ倍増、強盗が2割増など治安が悪化した。

 自らの腎臓を売りたいとネット上で申し出る失業者も。首都ベイルートに住む30代のオマル・ティビさんは新型コロナで飲食店を解雇された後、子供のミルク代にも苦しんでいると言い、「車も宝石も、家具も売った。この国の未来が見えない」と途方に暮れていた。(カイロ 共同)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus