新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないフィリピンで、教育省が「ワクチンが開発されるまで対面方式の授業は認めない」との方針を打ち出した。だが通信環境や機器が十分でない低所得層は代わりのオンライン授業を受けることも困難で、教育格差が広がる恐れがある。
首都マニラの小中高校では、感染防止策として3月中旬から休校が続く。6月開始予定だった今年の新学期は、感染拡大を受けて8月24日からに先送りされた。4~5月は夏休みだったため、子供たちは5カ月も学校に通えないことになる。
学校再開延期が公表された後、ドゥテルテ大統領が厳しい条件を付けた。「私が本当に安全だと確信するまでは誰も登校できない。まずワクチンがなければならない」
ワクチンの開発は世界中で進んでいるが、完成には数年かかるとの見通しもあり、フィリピン国内で安価に入手できるようになる時期は不透明だ。
教育省はドゥテルテ氏の意向に沿い、感染者が確認された地域の学校では対面の授業を認めない方針を表明した。代替策として、8月の始業以降も登校できない状態が続いた場合、通信端末を活用し、オンラインによる遠隔授業を実施する。
しかし世界銀行によると、2017年のフィリピンのインターネット使用率は60%にとどまる。政府には通信端末を全児童生徒に用意する予算はなく、低所得層の大半はネットに接続できる環境にもないとみられる。
小学2年の息子がいる30代主婦、ローザ・マナロさんは「通信端末がなく、買う余裕もない。息子が置いてけぼりにならないか心配」と話した。(マニラ 共同)