経財論

脱炭素社会には革新が不可欠 求められる挑戦

 昨今の異常気象の世界的な増加などを背景に、気候変動への対応は待ったなしの課題である。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が目指す世界の温室効果ガスの排出と吸収のバランス(ネット・ゼロ)は、既存の取り組みの延長では実現できず、革新的な技術の開発と、安価での普及、すなわちイノベーションの創出が不可欠である。その中核を担う企業には、地球温暖化対策を重要な経営課題に位置付け、果敢に挑戦していくことが求められる。(経団連副会長・杉森務)

 企業の挑戦後押し

 経団連は、こうした企業の挑戦を後押しすべく、6月8日に新プロジェクト「チャレンジ・ゼロ」を開始した。本プロジェクトに参加する企業などは、脱炭素社会に向けたイノベーションに果敢に挑戦する「『チャレンジ・ゼロ』宣言」に賛同するとともに、具体的な取り組みを表明する。プロジェクト開始時点で、137の企業・団体が、305のチャレンジを表明した。

 チャレンジは大きく3つに分類できる。第1に、「ネット・ゼロエミッション技術」の開発である。これは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする技術であり、例えば、水素、蓄電池、再生エネ、原子力、エネルギー・マネジメント・システム、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、CCUS(CO2回収・利用技術)/カーボンリサイクルなどが挙げられる。加えて、世界全体の温室効果ガスの大幅削減に資するもので、ネット・ゼロへの移行期に必要となる「トランジション技術」や、脱炭素社会を支える「適応・レジリエンス技術」の開発に関するチャレンジも多数、寄せられた。

 第2は、これらのネット・ゼロエミッション技術の積極的な社会実装・普及に向けたチャレンジである。技術的には実現可能でも、それが安価で普及しなければ、実効性がない。脱炭素社会を早期に実現するために、革新的技術の大幅なコスト低減に向けたイノベーションが不可欠である。第3に、これらに挑戦する企業への積極的なファイナンス(投融資)である。技術開発から社会実装に至るまで、莫大(ばくだい)な資金需要が必要となり、それが長期にわたると想定されるものも少なくない。政府資金はもとより、「ESG投資」として、民間資金を動員していくことも重要となる。

 チャレンジ・ゼロを推進

 経団連は、チャレンジ・ゼロが脱炭素社会の実現に有意な取り組みであることを示すため、地球環境産業技術研究機構の協力を得て、これらのイノベーションの社会実装によって実現される脱炭素社会へのパスを試算し、パリ協定が目指すネット・ゼロへの一つの絵姿を描いた。日本が従前より強みを有する省エネ技術はもとより、前述の多様なイノベーションを早期に創出・実装することが、脱炭素社会の実現に不可欠であることが示された。

 経団連は、チャレンジ・ゼロを強力に推進し、ESG投資の呼び込みや、異業種・同業種・産学官の連携を促すなど、パリ協定の掲げるネット・ゼロの早期実現を目指していく。その一つとして、経済産業省が今月7日に公表した「ゼロエミ・チャレンジ」と連携し、脱炭素社会の実現に向けたイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、国内外に発信していく。引き続き、参加企業やチャレンジを募りつつ、日本政府と連携しながら、チャレンジ・ゼロをさらに大きな動きとしていきたい。

【プロフィル】杉森務

 すぎもり・つとむ 一橋大商卒。1979年日本石油(現ENEOSホールディングス)入社。前身のJXTGホールディングス社長を経て、2020年6月ENEOSホールディングス会長兼グループCEO。18年から経団連副会長を務める。64歳。石川県出身。

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