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Go To迷走…修学旅行中止相次ぐ 感染リスク、授業確保優先

 新型コロナウイルス感染への警戒が続く中、修学旅行をめぐり学校現場が対応に苦慮している。秋のシーズンに向けて実施可否の判断を迫られているが、遠距離移動に伴う感染リスクや休校で不足した授業時間の確保を理由に中止の決断も相次ぐ。文部科学省は政府の観光支援事業「Go To トラベル」の活用による決行を促すものの、22日の開始を前にした制度の方針転換で事態は迷走。学校関係者からは「保護者に説明できない」との声が上がる。

 今月2日、新潟県長岡市立宮内小の児童84人が修学旅行で福島県会津若松市を訪れた。

 行程では「3密」回避を徹底。換気機能の高い最新型の観光バスを例年より1台多い3台借り、移動中の子供同士の距離を確保した。宿泊先も食事や入浴を他の客と接触せずに済むように選んだ。三沢淳伸(あつのぶ)校長は「初めての経験で全てが手探りだったが、学校で独自に対応を考え、無事に終えられた」と安堵(あんど)する。

 22日には「Go To」が東京発着の旅行や都民を除外して始まる。修学旅行は学習指導要領で特別活動に位置づけられた教育課程の一環だが、この制度の対象となる。文科省は6月、全国の教育委員会に制度を活用し、保護者負担を軽減するように通知した。

 全国修学旅行研究協会によると、修学旅行の平均的な費用は2泊3日の日程で中学生1人当たり6万円程度、高校では10万円ほど。感染対策でバスの台数や宿泊部屋を増やすことで生じる追加負担を「Go To」で軽減できる。

 授業時間の確保優先

 文科省は具体的な感染対策を周知したが、長時間の団体行動のハードルはなお高いのが実情だ。

 例えば、千葉県では今月9日までに柏や松戸、我孫子の各市がそれぞれ全ての市立小中で中止を決定した。

 柏市立中の男性教頭は「中止は想定できたとはいえ、生徒たちがかわいそうでならない」と肩を落とす。代替の日帰り旅行を検討中だという。

 長期に及んだ休校も影響する。相模原市は市立中の修学旅行を秋に延期することを決めていたが、学校再開が6月にずれ込んだことで一転、授業時間確保のため中止に。市教育委員会は「旅行の準備や振り返りも含めて50~60時間ほどを授業に充てられる」とした。

 東北地方に打診殺到

 一方、実施を決めた学校は、感染リスクが低い旅行先として東北地方を選ぶケースが目立つ。会津若松観光ビューローによると、「感染者ゼロ」の会津若松市には、新潟や宮城、茨城など約380校(7月上旬時点)から、9~12月の受け入れについて問い合わせを受けている。昨年同期の約1・5倍だという。

 北海道では、道教委が道外移動自粛を通知する中、道南部の七飯(ななえ)町が8、9月の旅行に東北地方を選定。「道央方面よりも感染リスクが少ない」と判断した。「Go To」に開始延期論も出る中、町教委幹部は「流動的な制度は保護者に説明できない。適用しない方向で準備を進めているが、制度が無事に動き出したら活用したい」と話す。

 全国修学旅行研究協会の岩瀬正司理事長は「感染予防を踏まえた新しい修学旅行のスタイルを確立するためにも『Go To』の活用は効果的だ」と述べ、安定的な制度導入を求めた。

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