紛争リスク少なく
エネルギーは安定的な供給、経済性、環境適合、安全性などのさまざまな要素を満たすことが求められる。しかし全てで完璧なエネルギーはなく、バランスをとりながら最適なエネルギーと、その組み合わせを選ぶことが重要だ。
この意味でいえば、日本は11年の東京電力福島第1原発事故後に原発の再稼働が停滞する中、安いコストで電力を安定供給できる石炭火力を活用してきた経緯がある。
日本で使われる石炭の調達先は豪州やインドネシア、ロシア、カナダ、米国などで、原油の大半を依存する中東に比べて紛争などがもたらす地政学的リスクが少ないという利点もある。
日本はこうした石炭火力の強みも踏まえ、高効率な石炭火力を生かしていく方針をとった。一足飛びに石炭火力をゼロにするという理想論を掲げず、現実的な一歩を踏み出したというわけだ。
日本撤退なら中国進出、安保上の問題も
石炭火力に否定的な潮流について、梶山弘志経済産業相は「(石炭火力の意義は)分かっていても、化石燃料を使うことに対する絶対的な非難がある」と指摘する。梶山氏はその上で「30年に、50年にどうしましょうかと議論をしている中で、高い目標を掲げればそれでいいということではない」と主張する。
また「脱石炭」の安易な強化は石炭火力のインフラ輸出を進める中国を利するという側面もある。
中国は提案中の案件も含め、パキスタン、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、エジプトなど20カ国以上の石炭火力発電事業に300億ドル以上を投資している。日本が撤退すれば中国が入り込むだけで、人権や国際ルール順守への意識の低さが批判されてきた中国が途上国への影響力を強めることは、安全保障上の問題となり得る。
日本の石炭火力を悪役にすることは簡単だが、国際社会の全体像を把握することも忘れてはならない。(飯田耕司)