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自治体が連携し仕事効率化実現 ICT導入、仕様統一でコスト削減 (1/2ページ)

 地方自治体の仕事も情報通信技術(ICT)の活用が求められるが、仕事の仕方が自治体ごとに違うためシステムの共同化が進まず高コストだ。これを打開するため国の地方制度調査会は税務や財務、給与など基幹系業務システムの仕様統一を答申した。効率化は可能か。住民への影響は。先行的なデジタル化の取り組みを紹介する。

 巨額投資迫られ

 鳥取県は、20年以上使っていた基幹系業務システムが陳腐化し巨額投資が必要な刷新を迫られていた。人口減少が加速し、職員数も税収も地方交付税も減少傾向だった。

 「県内市町村も同じ問題を抱えており、一緒にやればコスト削減ができると考えました」。県情報政策課の安田敦参事が振り返る。2015年5月に県内全自治体が参加してICT共同化推進協議会を設立、議論を開始した。

 ところが「個別業務の考え方、やり方が違う。例えば、上司の決裁を取るとき課長までかトップまでかなどが市町村によって異なる。標準化するには仕事の仕方を大幅に変える必要があった。市町村は総論賛成、各論慎重でした」と苦笑する。

 そこで一挙に統一するのではなく、県が中心となりできることから始める方針に転換。地方自治法に基づく連携協約を全自治体で結び、事務局業務の委託を県が受けて推進体制を強化した。

 16年9月に県内全自治体をつなぎ情報を共有する行政間の専用システムを構築した。以前は国から通達や通知が来れば、メールやファクスで市町村に連絡していた。

 「それを地方創生推進交付金など仕事の分野ごとにつくられた電子会議室に掲載して共有化。県と市町村で内容を議論し、それらを関係職員が見られるようにしました」

 会議室は現在335。平井伸治知事は「新型コロナウイルス対策や災害の際に、素早く情報を共有できるツールになる。今は使いこなすことに力を入れています」。

 17年4月からは県と13市町村が参加して電子申請システムの共同調達・共同運用を始めた。住民、事業者がインターネットにある「とっとり電子申請サービス」にアクセスすれば、住民票の写しの交付、所得証明書交付の申請などができるようにした。

 「どこからでも時間外でも手続きができ、手数料・郵送料はクレジットカードでの支払いも可能。住民の利便性も向上しました」と安田参事。

 18年4月には、全市町村立小中学校に校務支援システムを一斉導入した。各自治体が独自に導入するより12億円以上のコスト削減になった。

 校務とは教職員や児童生徒の情報管理、学校日誌や生活記録の作成など。学校ごとに独自の方法でまとめていたため、教職員は異動するたび方法を学ぶ必要があった。導入にあたっては学校現場の業務を標準化した。

 「先生は雑務が多すぎる。導入は働き方改革にもなり、生徒と向き合うという本来の時間を増やすこともできた」。平井知事が評価する。

 さらに言う。「共通化、相乗りできるシステムはもっと多く効率化はまだまだ可能だ。公共事業の入札や契約などでも市町村を支援できる。ICTは自治体が助け合う重要なツールになります」

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