海外情勢

FRB議長選び 政治に翻弄 任期残り1年半、水面下で進む人選

 11月に迫る米大統領選をにらみ、中央銀行の連邦準備制度理事会(FRB)の次期トップ選びが水面下で進んでいる。パウエル議長の任期切れまで1年半余り。FRB首脳人事は政治に左右されてきた歴史があり、今回も例外ではなさそうだ。

 FRBは政治からの独立性が求められる。ただ、議長は大統領が指名し、議会上院の承認が必要だ。パウエル氏は2018年2月に理事から昇格。民主党のオバマ前政権時に就任したイエレン前議長は、トランプ氏が求めた金融規制の緩和に慎重で再任を逃した。

 パウエル氏はトランプ氏の息のかかったクオールズ副議長と共に、オバマ前政権が強化した金融規制について、トランプ氏の意に沿う形で緩和に動いた。こうした事情があるだけに、民主党政権になれば再任の芽はほぼなくなる。FRBの事情に詳しい米メディア記者は「政権交代を想定したコンテストが既に始まっている」と指摘する。

 新政権なら3氏候補

 「バイデン大統領」誕生の場合、議長候補として取り沙汰されているのはサンフランシスコ連邦準備銀行のデイリー総裁だ。トランプ氏は新型コロナウイルス感染症の拡大による経済打撃からのV字回復を繰り返し強調するが、デイリー氏は「私は回復と呼ぶのをためらう」と一蹴するなど反トランプの急先鋒(せんぽう)だ。

 デイリー氏は労働経済の専門家で同性愛者であると公表しており、多様性を重視する民主党の路線にも合う。金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者で唯一の黒人であるアトランタ連銀のボスティック総裁も候補に挙がる。

 FRBの現執行部はトランプ氏が指名した人物が多数を占める。しかし、オバマ前政権時に就任したブレイナード理事は民主党寄りの主張を貫き、銀行規制緩和案の採決で反対票を投じ続けた。もう1人の有力候補だ。

 パウエル氏再任も

 一方、トランプ氏が再選を果たした場合は、パウエル氏再任の可能性も残る。両氏は過去に政策金利をめぐり鋭く対立していたが、最近はゼロ金利や量的緩和の再導入を機に関係が改善した。大統領選の行方は金融政策のかじ取り役の選定も左右しそうだ。(ワシントン 共同)

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