明確なビジョンを
翻って日中協力において、安倍政権は「新時代」の協力モデルとして日中第三国市場協力を推進してきた。18年に対中政府開発援助(ODA)の新規採択が終了したが、新たに「日中両国が対等なパートナーとして、ともに肩を並べて地域や国際社会に貢献する時代」(同10月の安倍首相訪中時の発言)のプロジェクト形成を目指したものである。習主席来日の延期に伴い、予定されていた第2回日中第三国市場協力フォーラムも延期になっている。日中関係の後退や先端技術に関わる規制が強まるなか、日中企業のマッチングの可能性は狭まっているものの、協力できる案件においては地道に経済協力を実施すべきである。
ただしその際に重要なのは、日本側が改めて日中協力の意義を自らの言葉で説明し、強く発信することである。中国側は既に第三国市場協力を「『一帯一路』共同建設」の一端として位置付け、日本、韓国、シンガポールや西欧諸国などの先進国を「一帯一路」に参画させるメカニズムとして宣伝している。また「新時代」という用語は、中国の政治的文脈では「習近平時代」と同義である。日中関係は何をもって「新しい時代」に入ったとするのか。どのような領域で協力し、何を目指すのか。中国よりも大きな声で、日本の目的を国際社会に発信することが望まれる。
【プロフィル】江藤名保子
えとう・なおこ 2015年日本貿易振興機構(ジェトロ)・アジア経済研究所入所。専門は東アジア国際政治、現代中国政治。スタンフォード大学大学院(国際政治学修士)、慶應義塾大学大学院(法学博士)修了。この間、北京大学国際関係学院およびシンガポール国立大学東アジア研究所で客員研究員。