海外情勢

トルコで若者の政治不信拡大 世界遺産のモスク化など権威主義を警戒

 トルコを代表する世界遺産アヤソフィアが再びイスラム教のモスク(礼拝所)となった。国際社会の反発と懸念をよそに、国民の多くがモスク化を容認し、国是である世俗主義の形骸化が浮き彫りになった。一方、若者の間にはイスラム教を重視するエルドアン大統領への不満が渦巻き、政治不信が広がっている。

 「誰が博物館に変えたのか。一つの過ちをわれわれが直している。それだけのことだ」。エルドアン氏は7月、閣議後の演説でこう踏み込んだ。

 1934年にモスクだったアヤソフィアを博物館に変更したのはアタチュルク初代大統領だ。イスラム教を「後進性の象徴」と捉え、徹底した政教分離で世俗化を推進した。建国の父として今なお神聖視されている。

 それでも国民のほとんどがイスラム教徒だ。賛否を問われて異を唱えるのは難しく、各世論調査では6~7割がモスク化に賛成した。アタチュルクが創設した共和人民党(CHP)党首も「反対しない」と明言し、CHPの次期大統領候補と目されるイマモール・イスタンブール市長は「私にとって昔からモスクだ」と話す。

 エルドアン氏は与党、公正発展党(AKP)が2002年に政権を握って以来、長期政権を維持してきた。世俗主義の「守護者」を自任してきた軍の影響力を排除し、強権体制の確立に成功。世俗主義はイスラム教の価値観を重視する流れにのみ込まれている。

 ただ若者は敏感に反応する。権威主義の拡大を嫌い、自由の制限を警戒。6月末には大学入試を控えた各地の高校生らとエルドアン氏とのオンライン会議が「炎上」した。生中継していた動画サイトのコメント欄に「あなたには投票しない」と書き込みが殺到。「低評価」が42万件を超え、大統領府側はコメント機能の停止に追い込まれた。

 受験生はエルドアン氏が宗教教育を強化した時期に育った「敬虔(けいけん)な世代」のはずだった。イスラム教指導者養成学校が急増し、公立校でもイスラム教の授業が増え、高校のカリキュラムから進化論が削除された世代だ。

 番組を見ていた受験生のファーティヒ・ソンメズさんは「私たちの世代は宗教教育に飽き飽きした。大統領はアヤソフィアや過去に関心があるようだが、私たちは未来が心配だ。環境問題や表現の自由はどうなるのか。仕事があるのかも分からない」と話した。

 世俗派の地元紙ジュムフリエトの著名記者、オルハン・ブルサル氏は「政権は古い考えを押しつけようとするが、グローバル化した時代に育った若者には響いていない」と強調した。(イスタンブール 共同)

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