海外情勢

ココナツをサルに収穫させるのは“虐待”と批判 タイ農家反発「先祖からの伝統」

 タイの名産ココナツをめぐり、動物保護団体がサルに収穫させるのは虐待だと訴え、欧州を中心に不買運動が広がった。野生の幼いサルを捕獲し過酷な労働を強いていると批判され、国際世論の悪化にタイ政府は対応に苦慮。ココナツ農家は「サルを使うのは長年の伝統。不当に扱うわけがない」と猛反発している。

 首にひもを付けたサルが高さ15メートルはある木をするするっと登っていく。ソムジャイ・ニンマクルさんがひもを軽く引いて合図すると、器用に実をつかみ、ねじり始めた。重さ1キロほどの実が地面に落ち、ぼとんと大きな音がした。

 ソムジャイさんは南部チュムポンで、ココナツ農園を経営する。「サルは家族と一緒だよ。虐待なんて言い掛かりだ」

 発端は米動物保護団体「PETA」アジア支部による告発だった。7月公表した報告書で、1匹当たり1日1000個の実を収穫させられたり、人を襲わないよう歯を抜かれたりしていると指摘。収穫時以外は鎖でつながれた「奴隷」で、多くのサルが精神を病んでいると主張した。(【そして2021年】外資批判激化、地図アプリから店舗も消えた)

 ブラジルやコロンビアでは専用の昇降機を使い、作業員が収穫しているとも説明。タイ産ココナツの不買を呼び掛けると、英国のスーパーが販売を中止し、同調する動きが拡大していった。

 タイは昨年、123億バーツ(約423億円)のココナツミルクを輸出した。対応を迫られた政府は、サルが収穫するのは「一部の業者だけだ」と強調。透明性確保のため、生産元や流通経路をたどれるトレーサビリティー制度の導入を決めた。

 タイの食品大手は虐待を否定しながらも、サルを使わないとの誓約書を農家と交わすと明らかにした。納得がいかないのがソムジャイさんら「一部の業者」だ。

 チュムポンでも作業員が収穫していた時期があったが、転落事故が多発。足場が悪く、昇降機の導入が難しいためサルを使い続けている。「1匹の収穫量は多くて1日200個。疲れていれば休ませる」。PETAが指摘するような酷使はごく一部の悪徳業者の仕業だとし、ソムジャイさんの怒りは収まらない。

 PETAの告発後、1個13~14バーツだった価格は10バーツに下落した。チュムポンの農家には、子供の頃からサルと遊び一緒に育ったと話す人も多い。地元生産者団体の副会長、ジンタカン・プロムスワンさんは「サルを使うのは先祖から受け継いだ知恵で、伝統なんだ」と訴えた。(チュムポン 共同)

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