【モスクワ=小野田雄一】大統領選の不正疑惑で抗議デモが続くベラルーシをめぐり、ロシアがルカシェンコ大統領を支援する動きをみせはじめた。欧州連合(EU)がベラルーシへの制裁導入を決めるなど、ルカシェンコ氏への圧力が国内外で高まる中、体制転換により同国が「第2のウクライナ」化する動きを警戒し、抗議デモや欧米を牽制(けんせい)する狙いがありそうだ。
ロシアのプーチン大統領とルカシェンコ氏は15、16日の連日、電話会談し、デモには「国外勢力の関与」の可能性があるとし、事態収束へ協力することで一致した。現地報道によると、ルカシェンコ氏は外国の軍事的脅威を受けた場合、「ロシアが全面支援する」と明らかにした。
両国は露主導の「集団安全保障条約機構」(CSTO)に加盟。同機構は加盟国に国外勢力が介在した政権転覆などの脅威が発生した場合、軍事を含む相互援助を行うことを定める。
ベラルーシでは9日の大統領選でルカシェンコ氏の6選が決まったとの結果に対し、不正を訴える抗議デモが全国で発生。政権側は排除に乗り出し、参加者6千人以上を拘束した。デモ参加者に死者も出た。だが、デモは親政権色の強い国営企業にも波及し、首都ミンスクでは16日にも数万人規模のデモが発生、収束する気配は見えていない。
一方、EUの外相理事会は14日、ルカシェンコ政権の対応を非難し、デモ弾圧や大統領選の不正に関わった当局者らに制裁を科す方針で一致。ミシェルEU大統領は17日、緊急のEU首脳会議を19日に開き、対応を協議すると発表した。
ポンペオ米国務長官も東欧歴訪中の15日、ポーランドで「選挙は自由でも公正でもなかった」と批判し、デモに参加する市民らを支える考えを示した。
ルカシェンコ氏は近年、ベラルーシへの影響力を持つロシアを牽制するため欧米との関係強化を模索し、ロシアとの関係は緊張もはらんでいたが、苦境に立たされ、助けを求めた形だ。
ロシアとしてもベラルーシは北大西洋条約機構(NATO)の領域やEUとの間の緩衝地帯として重要であり、隣国ウクライナのように親露派政権が政変で倒れ、親欧米政権が誕生する事態は避けたい。ルカシェンコ氏に警戒心を持つものの、現体制の存続が望ましいと考えている。
ロシアでも最近、極東で反政権デモが起きているだけに、プーチン氏としてはベラルーシの体制危機がロシアに波及することも懸念しているとみられる。