専欄

早くも厳しい試練に直面 新世代の中国IT経営者

 中国のIT業界では、アリババの馬雲、華為技術(ファーウェイ)の任正非などに続いて、第2世代とも言える新たな経営者が次々と生まれている。ところが、彼らの率いる企業が大きくなればなるほど、その行動ぶりを見る世間の目も厳しくなってくる。とりわけ米国では、セキュリティー上の問題などを理由に、これら企業を市場から排除する動きが強まっている。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者、張一鳴は、まだ30代の若き起業家である。

 天津の南開大学を卒業後、IT関係の会社を興したが、最初は失敗。だがそれにめげずに、検索サイトの会社などで力を蓄え、2012年にバイトダンスを設立した。いまや米フォーブスが毎年発表している「中国の富豪ランキング」でも、上位に入っている。

 このところ成長が目覚ましい電子機器受託製造サービス(EMS)大手、立訊精密工業(ラックスシェア)の創業者である女性の王来春も、絵に描いたようなサクセスストーリーの持ち主だ。

 広東省スワトーの農村出身で学歴は中卒である。1988年、21歳の時に深センに出稼ぎに行く。厳しい労務管理で知られる台湾の富士康(フォックスコン)に入り、徐々に頭角を現していく。中国出身者では最高位の課長にまで昇格するが、独立して2004年に立訊精密工業を立ち上げた。

 在宅勤務の普及で大躍進したズームの創業者、袁征も中国系米国人の実業家である。1990年代にマイクロソフトのビル・ゲイツの演説に触発され、米国行きを決意した。シリコンバレーに潜り込み、小さなウェブ会議の会社に入る。会社は成長したが、そこでは満足できずに、11年にズームを立ち上げた。

 もっともこれらの新しく台頭してきた経営者は、輝かしい成果を挙げると同時に、早くも厳しい試練に直面している。

 ティックトックは、米国政府が利用禁止に動き出している。ズームは発展を急ぐあまり、セキュリティー上の懸念やプライバシー面での問題が表面化してしまった。立訊精密工業にしても、激しい半導体をめぐる競争の中で、今後、トラブルに巻き込まれないともかぎらない。

 国有企業でなければ、政府との癒着を避け、セキュリティー上の問題をクリアしていくことは十分可能なはずだが、コントロールの厳しい今の政権下ではそれが難しい。(敬称略)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus