海外情勢

「日台で対中リスク分散を」 香港国安法を台湾駐日代表に聞く (1/2ページ)

 中国が6月に香港で施行した国家安全維持法(国安法)を根拠に、自由を求める民主派への弾圧をエスカレートさせている。香港で反中論陣を張っている報道機関のトップや、23歳の女性学生リーダーまで逮捕された。香港は対中ビジネスのゲートウエーで、日本にとっても台湾にとっても重要な拠点だが、国安法の影響が懸念される。台湾の駐日大使に当たる台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表は、「日本と台湾は対中ビジネスで国際協力とリスク分散を」と訴えている。(聞き手 河崎真澄)

 民主勢力に打撃

 --国安法の狙いは何か

 「香港で相次いだ選挙制度の民主化要求や規制強化への抗議デモに対し、『一国二制度』による香港の法体系を強引に飛び越え、民主勢力に打撃を与えようとした。また、新型コロナウイルス問題や大規模な水害による経済低迷、共産党内部の権力闘争など、国内問題への批判をそらす共産党の伝統的な政治手段だ」

 「国安法違反容疑で香港紙、蘋果日報の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏や女性活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏が相次ぎ10日に逮捕され、その後、保釈された。その報道映像を見て、民主社会に暮らすわれわれはみな胸を締め付けられ、憤慨したはずだ」

 「国安法は香港に永住権を持たない人物にも適用する条文がある。共産党に不利な言論を海外も含めて封じ込めようとしている。次は(習近平指導部が『一国二制度』の受け入れを迫る)台湾がターゲットになる懸念も排除できない」

 --どう対処していくか

 「1997年の返還から50年間、香港に保障された高度な自治など『一国二制度』の枠組みを(国安法制定で)破壊した中国に対して、『国際ルールを守らない国』との共通認識が世界の民主国家に広がった」

 「台湾は香港からの移民受け入れ準備を進めているほか、防衛力の強化など対策を取るが、香港や台湾のような“被害者”だけで対抗することは難しい。いわば家庭内暴力(DV)にも似て、第三者の力を借りなければ防ぎきれない。日本や米国の支援が必要だ」

 --日本に何を求めるか

 「台湾と日本の間に外交関係はないが、感染症や災害など人々の安全対策で交流拡大を急ぎたい。日本は台湾にとって隣の国だ。万一、台湾が中国の手に落ちたら、日米とも中国と(地政学的に)直接、対決せざるを得なくなるだろう」

 「中国ビジネスのために政治に口を挟まないという人がいる。だが、中国では政治と経済は切り離せない。見て見ぬふりをする人がいるならば、間接的に共産党政権を手助けすることになる。人権や法治の基本原則を改めて考え、共産党の本質を認識すべきだ」

 通信の監視が心配

 --香港の経済的な地位はこの先、どう変化するか

 「『一国二制度』が保障されていた香港は、英国時代からの法治の基礎があった。だが国安法施行で米国は、中国本土と区別して香港に適用してきた優遇措置を取り消した。香港に進出している台湾や日本の企業にどのような影響を与えるか、不当な執行がないかなど注視する必要がある」

 「最大の問題は国安法の解釈権が中国にあり、香港でも共産党政権の裁量で際限なく、海外から訪れた人であっても身柄拘束ができることだ。香港への往来が安全でなくなる。さらに香港内でもインターネット環境の制限や通信の監視が心配される。ビジネス上で大きな障害になるだろう」

 --対中進出への影響は

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