海外情勢

イスラエル・UAE合意に反発、様子見、沈黙…アラブ諸国、成り行き見極め

 【カイロ=佐藤貴生】イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化合意を受け、中東では、反発や様子見、沈黙などの反応が交錯している。合意はパレスチナ問題の切り捨てだとの評価があることから、アラブ諸国の多くは世論の動向や事態の成り行きを見極めたい考えとみられる。

 13日に発表された合意に関し、パレスチナ自治政府は「裏切りだ」とUAEを非難した。イスラエルによるヨルダン川西岸などの占領を追認するものだとの反発からだ。

 隣接するヨルダンの外相は「イスラエルが占領をやめる意思を持って取り組むなら、地域は平和に向かうだろう」と留保をつけた。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争で東エルサレムとヨルダン川西岸地区をヨルダンから占領。同国は94年、将来のパレスチナ国家の領土とすることを前提に西岸の主権を放棄してイスラエルと平和条約を結んだが、全人口の7割がパレスチナ系といわれ、パレスチナ問題とはなおも深いかかわりがある。

 アラブで初めてイスラエルと79年に平和条約を締結したエジプトのシーシー大統領は合意を歓迎する一方、イスラエルが西岸のユダヤ人入植地などの併合を停止するかを注視する意向を示した。合意に伴う米国、イスラエル、UAEの共同声明に、併合を停止するとの一文が盛り込まれたことを受けての反応だ。

 合意内容について、イスラエルのネタニヤフ首相は、停止は一時的なもので「(併合)計画に変更はない」と説明。これに対しUAEは「中止だと理解している」としており、解釈には隔たりもうかがえる。

 ペルシャ湾岸諸国では、サウジアラビアが合意についてコメントしていない。対イランでの協調のためにイスラエルと水面下で関係を築いてきたとみられるが、「盟主」を自任するイスラム世界からの反発を懸念して安易な態度表明を避けているとも指摘される。

 米やイスラエル、イランと独自のパイプを持ち、仲介外交を行ってきたオマーンの外務担当相は17日までに、イスラエルの外相とパレスチナ自治政府高官と個別に会談した。

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