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ダウンロード世界一も TikTokの影響力は消せるのか

 米中摩擦が激しさを増すなか、いくつかの中国企業が代理戦争のように、クローズアップされている。その筆頭が華為技術(ファーウェイ)だが、最近では「TikTok(ティックトック、抖音)」もその一つである。日本でも既に低年齢層を中心に広まっているが、多くの大人たちには、耳慣れない名前かもしれない。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 ティックトックは、モバイル向けショートビデオのプラットフォームで、音楽に合わせて15秒ほどの動画を投稿する。ユーチューブに比べて使い勝手がいいと、若者たちが飛びついた。米調査会社センサー・タワーの報告によると、2018年第1四半期、アップストアでのアプリダウンロード数で、世界一を記録したのがティックトックなのだそうだ。

 その影響力を知らしめたのが、楽曲「オールド・タウン・ロード(Old Town Road)」の大ヒットである。

 ラップ歌手リル・ナズ・Xが歌う「オールド・タウン・ロード」が、同年米国の音楽チャート、ビルボードのシングル部門で17週連続1位を記録し、約60年続く同チャートで歴代最長を更新した。リル・ナズ・Xは、ラッパーとしては無名だったが「オールド・タウン・ロード」をSNSで発表すると、ティックトックで人気に火がつき、世界中の若者たちが、カウボーイやカウガールにふんする動画をティックトックにアップしたのである。今後ティックトック発で人気に火のつく楽曲を作るアーティストも増えていくことは、当然予想されていく。

 ティックトックの運営は北京字節跳動科技(バイトダンス)という会社が行っている。

 創業者の張一鳴は1983年生まれで、2005年に南開大学卒業後、旅行検索サイトや不動産検索サイトの立ち上げに携わった。そして12年にバイトダンスを起業し、続々とスマートフォン向けのアプリを発表する。18年10月に30億ドル(約3162億6000万円)の資金調達を行ったが、その時既に、会社は時価総額780億ドルという金額が付けられている。

 ティックトックの成功例から、今中国では、第2のティックトックと言うべきメディアがいくつか生まれている。ティックトックが都会で受けているのに対し、地方都市では「快手」というアプリが人気なのだそうだ。特に閲覧されているのが「高空墜物」というジャンルで、住宅の高層階から大きなごみを投げ捨てる様子を捉えたものだという。もちろん違法行為なので、摘発も含め、快手の影響力は、政府にまで及んでいるらしい。

 トランプ米大統領は、ティックトック利用者の位置情報、アドレス、閲覧・検索履歴などが自動で記録される点を問題視している。米国社会にも大きく影響しているこのアプリが、今後どういう道をたどるのか、引き続き注目していきたい。(敬称略)

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