米民主党の大統領選候補に指名されたバイデン前副大統領は20日の指名受諾演説で雇用重視を強調した。公約の中には法人税率の引き上げも含まれている。このためバイデン氏が大統領選に勝利して公約実現に踏み切れば、米国経済の悪化を通じ日本の景気にも下押し圧力がかかり、株価などに悪影響が及ぶ恐れがある。ただ、新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、誰が大統領でも景気下支え策を継続せざるを得ないとして、日本経済への直接的な影響は少ないとの見方もある。
バイデン氏は法人税率の21%から28%への引き上げを掲げ、“トランプ減税”の撤回を打ち出す。仮に増税が実現した場合、みずほ証券によれば、米国企業の国内の利益が5~10%程度縮小する可能性があるという。環境政策でも規制強化を訴えており、大統領になれば規制緩和が進んだトランプ政権下よりも企業の負荷が増す可能性がある。
米国企業の業績悪化は、米株式市場や個人消費にマイナスとなる。米国の景気がさらに悪化すれば、輸出企業を中心に日本経済にも逆風となりかねない。
もっとも、「法人税と環境規制の2つを除けば、経済政策で現政権とバイデン氏で目立った差異はない」(みずほ証券の小林俊介チーフエコノミスト)との指摘もある。また、新型コロナで米国の景気が低迷するなか、誰が大統領になっても「景気にマイナスの政策はとれない」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)として、日本経済への影響は限定的と見る向きもある。(大柳聡庸)