国内

GoTo1カ月 遠い経済好循環 感染拡大、参加にためらい

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」開始から1カ月が経過した。利用客が増えたホテルもあるが、新型コロナウイルス感染の再拡大、東京都民への適用除外が響き全国の観光地には恩恵が届かず「失敗」との声も。「事業が複雑でハードルが高い」と参加をためらう中小の宿泊施設もあり、政府が掲げる「地域経済の好循環」は遠そうだ。

 一部では恩恵も

 美しいビーチが人気の和歌山県白浜町。白良荘グランドホテルは、感染防止のため宿泊者を定員の70%に抑えており、8月末までほぼ空きがない。海水浴場の閉鎖が相次ぐ中、町は7月23日に海開き。前日開始のGoToがタイミング良く重なり、担当者は「京阪神からも来てくれている。今はGoToに頼るしかなく、本当にありがたい」と喜ぶ。

 神奈川・箱根温泉のあるホテルも「人口が多い横浜、川崎などが近く、客足の戻りが早い」(担当者)という。

 一方、群馬県渋川市の伊香保温泉は日帰り客が増えているが、お盆の宿泊施設は空室が目立ち、明暗を分けた。地元観光協会は「都民が対象から外れている影響も大きく、効果は限定的。そもそも旅行は悪という雰囲気がある」と嘆く。

 熊本県南阿蘇村にあるペンションの宿泊者は今夏、例年の半分程度。経営者は「常連のリピーターがほとんど。GoToで来た人はおらず、効果はまだない」と話す。

 大手の日本旅行によると、同社利用の旅行者数はGoTo開始後も前年比20~30%程度で推移。半分程度に回復した観光地もあるが、割引対象から外れた東京都や感染が広がる沖縄県は10%程度で、担当者は「大幅に改善したとは言えない」。

 交通機関はどうか。8月7~17日の新幹線、在来線特急の主要線区の利用者は前年同期比76%減、7~16日の国内航空線の利用者は64%減った。

 ただ、高速道路は主要区間の1日当たり平均交通量(7~16日)が33%減と落ち込みが比較的緩やか。不特定の人との接触を避け、感染リスクを減らしたいという旅行者の心理が読み取れ、日本バス協会は「マイカーを使った個人旅行が中心となっている」とみる。

 中小の申請促進課題

 政府は来年1月末まで事業を継続する方針だが、中小宿泊施設の参加促進が課題だ。

 大手ホテル、旅館は、代理店や予約サイトが取り扱っており、これらを経由した予約の割引相当分の給付申請は代理店などが行う。この枠組みから漏れる中小施設も電話やインターネットで直接販売できるが、自らネットなどで給付申請しなければならず、不正防止のため第三者機関への宿泊記録提出も求められる。

 ただ、高齢者が切り盛りする中小施設も多く「手続きが難しく、人手も少ない。周りの民宿も登録しているところは少ない」(福井県越前町の旅館)、「ネットに慣れない年配の経営者は登録を見送っている」(長野県野沢温泉村の旅館組合)と困惑が広がる。

 達増拓也岩手県知事は21日の記者会見で「7月に(事業を)始めてしまったのは準備もできておらず早すぎた。失敗と言っていい」と批判した。

 山口那津男公明党代表は18日の記者会見で「感染が広がる状況で、当初構想したような展開になっていない」と指摘。事業内容などを検証し、秋に向けて効果を引き出す努力を政府に求めた。

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