国内

「自動販売機大国」日本に転機 新型コロナで新たなニーズ (2/2ページ)

 コンビニより「近い」

 だが、新型コロナの感染拡大は、新たな自販機へのニーズも生み出している。

 販売員を必要としない自販機は「非接触型で衛生的」な販売チャンネルであるだけでなく、省スペースでの設置が可能のため、ファミマのASDのように“コンビニよりも近い店舗”として、なるべく自宅や職場の周辺で過ごしたいという新たな生活様式にも適応しやすい。

 コロナ禍ならではの物品調達先としても重宝されている。羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングは7月、マスクの自販機を空港ターミナル内に設置した。CCBJHも同月、東京都内の大型商業施設などで冷えたマスクの自販機販売を試験的に始めた。「密」が起きやすい場所での緊急需要を見込む。マスク自販機を製造する富士電機の担当者は「交通機関や商業施設など30社以上から引き合いがある」と手応えを強調する。

 こうした中、コロナ対応としてだけでなく、自販機販売の魅力そのものを高めていこうとの取り組みも加速する。

 ダイドーは、顔認証決済ができる自販機の実証実験を7月から開始。小銭などを持ち運ぶのが難しい工場などでの利用を想定する。実験結果も踏まえ、来年から本格展開を予定する。サントリー食品インターナショナルは、スマートフォンアプリによる健康管理と組み合わせ、オフィスに設置した自販機でアプリが発行するクーポンと健康飲料の引き換えもできるサービスを展開する。

 飲料売り上げの14%が自販機という伊藤園は、衛生面での強みを打ち出す。茶殻に含まれるカテキンなどの抗菌効果を生かした抗菌シールを壁紙メーカーなどと共同開発。全国約3万台の自販機の購入ボタンや取り出し口などにほぼ貼り終えた。担当者は「新型コロナ収束後も、衛生面重視の考えは消費者に残るはずだ」と先を見据える。

 コスト構造にもメスが入る。CCBJHは商品補充を行うスタッフなどの配送ルートや頻度などをゼロベースから見直すことで、スタッフの業務を効率化。残業代など削減につなげる。ダイドーも1台1台の自販機に通信機器を取り付け、販売データをタイムリーに把握する取り組みを進めている。

 CCBJHのカリン・ドラガン社長は「消費者は利便性にお金を出していいと考えており、自販機は間違いなくこの要望に応えられる販売チャネルだ。今後も最先端のツールとなり、消費者は自販機で買い続けるだろう」と将来における有望性を評価している。(経済本部 佐久間修志)

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