海外情勢

対外開放や公平な競争要望、中国日本商会が意見書 予見性向上を期待

 中国に進出した日系企業で構成する中国日本商会はこのほど、中国政府にビジネス環境の改善を求める意見書「中国経済と日本企業2020年白書」を発表した。中国における外資参入のより一層の開放や、グローバルスタンダードのさらなる採用を要望した。米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの流行など不確実性が高まる中で、ビジネス環境の予見性が向上するよう期待を示している。

 今回の意見書の柱は、「対外開放」「行政の規制運用・手続き」「公平な競争」の3要素となっている。対外開放では、外資の参入を規制する分野を列挙した「ネガティブリスト」では対象外になっても、それとは別の規定により参入が難しいといった事例に対応するよう求めている。具体的なケースとして、外資企業でもインターネットでの音楽分野のサービスを運営できるよう要望した。

 公平な競争に関しては、政府調達で主に中国産の製品が購入され、輸入品の購入に対して厳格な審査管理が行われていると指摘している。輸入製品の政府調達市場の範囲をさらに開放することにより、輸入製品と国産製品が平等に競争できる環境が整うよう要望した。

 行政の規制運用・手続きについては、新型コロナの感染対策に関連するものが目立った。具体例として、中央と地方の政府がそれぞれ出す指示が相互に矛盾するケースがあったと指摘。また、感染対策が打ち出された後に、その措置がいつ終了するか明確でないことや、当局から企業への指示の通知がSNS(会員制交流サイト)を通じて行われるといったこともあったという。意見書は「今後、緊急的な事態が生じた際にこうした問題が極力生じないよう改善を要望する」と訴えている。

 北京市内で開かれた記者会見で、中国日本商会の小川良典会長(丸紅執行役員中国総代表)は「米中貿易摩擦や新型コロナなどにより、日系企業のビジネスにおける不確実性が高まっている。中国でのビジネス環境の予見性の向上に資する制度の整備・運用が期待される」と強調した。

 中国日本商会は10年から意見書を作成。中国各地の日系企業が直面するビジネス環境上の課題を分析し、解決のための方策を中国の中央・地方政府への建議として取りまとめている。

 今回は、中国日本商会と中国各地の商工会組織の日系企業8678社を対象に意見を集め、建議の総数は513件に上っている。中国政府も増加する高齢者への対応を重視する中で、今回は新たに「高齢者関連サービス・産業」についても建議に加えた。中国日本商会は、同意見書を用いて中国の中央・地方政府との対話に積極的に取り組んでいくとの方針を示している。(北京 三塚聖平)

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