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静岡・基準地価 全用途で12年連続下落、リーマン・ショック以来の下げ幅拡大 

 静岡県が29日に発表した令和2年基準地価調査(7月1日時点、610地点)によると、住宅地・商業地・工業地の全用途の平均変動率は前年と比べてマイナス1・6%と12年連続で下落し、下げ幅は0・9ポイント拡大した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済活動が停滞し、土地需要が低迷したことが要因という。下落率の拡大はリーマン・ショックの影響を受けた平成21年以来で、新型コロナが地域経済に与えた打撃の大きさは数字の上からも浮き彫りになった。

 用途別の平均変動率は、いずれもマイナスで住宅地1・6%、商業地1・7%、工業地0・9%だった。このうち商業地の下落幅は前年(マイナス0・1%)から1・6ポイントも広がった。下げ幅は住宅地で0・6ポイント、工業地で0・7ポイント拡大し、全用途で地方圏平均(住宅地0・9%、商業地0・6%、工業地0・1%のマイナス)より落ち込みが大きかった。

 地価が上昇したのは住宅地で6地点、商業地で3地点にすぎず、横ばいは住宅地22地点、商業地15地点にとどまった。22年連続で県内最高価格地点となった静岡市葵区呉服町2丁目でさえ、前年の150万円から147万円に値下がりし、周辺には空き店舗が目立つ状況になっている。

 地価が下がらなかったのは、環境がよくてブランド力のある住宅街、再開発や区画整理が進む中心商業地、高速道路のインターチェンジ近くの工業地といった一部だけだった。

 市町別平均変動率(全用途)は全35市町でマイナスとなった。下げ幅が最も小さかったのは長泉町でマイナス0・3%。次いで三島市▽御殿場市▽清水町▽裾野市と続き、上位5位は全て県東部が占めた。逆に下げ幅が大きかったのは松崎町でマイナス4・5%。西伊豆町▽伊豆市▽東伊豆町▽南伊豆町と続き、伊豆地区の市町が並んだ。

 地価下落が抑えられていた長泉町、三島市、清水町は東海道新幹線が停車するJR三島駅に隣接し、首都圏への通勤圏といえる。御殿場市や裾野市は高速道路に近く、自粛生活による“巣ごもり消費”を受け、需要が急増した物流拠点として引き合いがある。

 一方、災害リスクが高いとみられる沿岸部に面する伊豆地区の市町は高速道路網から離れていて利便性に劣る。少子高齢化による人口減少が著しいことも地価下落に歯止めが掛からない要因とみられる。

 調査に当たった不動産鑑定士の鈴木隆史さんは「地価は1月まで回復傾向にあったが、以降の新型コロナによって相殺された。特に外出自粛や営業自粛要請の打撃を受けた繁華街で下落した」と分析。全国的にみて静岡県の下落幅が大きいことは「新型コロナの影響を受けやすい製造業や観光業が基幹産業であることが要因の一つではないか」と指摘した。

 今回公表された7月1日時点の基準地価には、新型コロナの影響は約半年分しか反映されていない。県土地対策課は「新型コロナの影響を測る指標として、来年3月発表の1月1日時点の公示地価が注目される」としている。

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