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一帯一路にデジタル人民元 沿線国での普及と危険性

 前回のコラムで「デジタル一帯一路」を取り上げたが、それに絡んできそうなのがデジタル人民元の発行である。中国では、デジタル人民元の発行準備が進んでおり、世界で最初にデジタル通貨を実用化する日が近付いている。発行しても欧米日での普及は難しいが、一帯一路の沿線国ならば、通信のデジタル化とセットでデジタル人民元を導入していくことは十分可能かもしれない。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 デジタル人民元は、早くも中国の一部都市で実証実験が始まっており、2022年に北京で開催予定の冬季五輪までには実現しそうな勢いである。

 中国の場合、既にスマートフォン決済が社会の隅々に行き渡っているので、デジタル人民元の国内での導入には抵抗がなさそうだ。銀行口座を持っていない住民も多いので、この点でも送金や決済に便利感を与えそうだ。しかも、デジタル人民元は中央銀行である中国人民銀行が発行するので、現在流通している人民元と同じ法定通貨となる。政府への信用が裏付けとなり、価値も安定しよう。

 問題はやはり匿名性をどうするか、であろう。通貨当局からすれば、匿名性をなくせば、悩みの種である偽造人民元を市場から締め出すことができる。だが利用者は、取引情報を中央銀行に握られてしまう。中国では強行できても、個人情報の保護に敏感な欧米日では、受け入れるのは難しかろう。

 中国で資本の自由化が遅れていることも、デジタル人民元の使用範囲を狭めてしまおう。当局は資本の自由化に向けて、少しずつ環境整備を進めてはきたが、人民元の国外への大量逃避を恐れて、最後の決断ができずに現在に至っている。

 だが、欧米日がデジタル人民元の先行を許せば、欧米日でも海外の送金には使われる可能性がある。現在の国際的な送金は、送料が高いからだ。欧米日は、自らもデジタル通貨を発行するか、あるいは送金の制度を改善するか、早急に対応策を整えておく必要がある。

 それ以上に注視しておくべきは、「一帯一路」沿線国での普及であろう。第5世代(5G)移動通信システムネットワークを設置すれば、デジタル人民元の導入に技術面からの支障はない。沿線国も都市や工業団地づくりの一環として提案されれば、断りにくいかもしれない。だが、通信だけでなく、金融も中国に抑えられてしまう危険性を知っておかねばなるまい。

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