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「光盤行動」でバージョンアップ、中国の食品ロス対策

 初めて中国のレストランに行くと、おそらく日本人はみんな驚くだろう。テーブルに所狭しと並べられた料理の数々、入りきらない皿は、なんと2段に積まれている。これがいわゆる「食べ残してはじめておもてなし」という習慣か…、と批判的に見てはいけない。食べきれなかった料理は持ち帰っているからだ。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 これは1990年代から続く「不要浪費」の標語のもと、常識化している風習である。鍋料理でも、余った肉類、野菜、麺類にいたるまで「打包(持ち帰り)」の一言で、従業員が専用の容器を持って飛んでくる。私は烏骨鶏丸ごと1羽で取っただし汁まで持ち帰ったことがある。翌日おじやにしていただいたら、本当に美味だった。

 こんな常識も、豊かになるにつれ「面倒くさい」と思うらしく、残った料理も打包されず、廃棄されることが増えてきた。

 対して危機感を募らせたのが習近平政権である。中央テレビの報道によると、中国人が1年に食べ残す量は金額換算で2000億元(約3兆1040億円)に達し、これは2億人分の食料費に相当するという。より細かい数字では、浪費される食料は1人93グラム、率にして11.7%。特に都市部では、1年に1800万トンが無駄に捨てられ、これは3000万~5000万人分の1年分の食料に相当する。(2018年「中国都市飲食浪費報告」)

 習近平政権は今年8月、2度目となる食品ロス対策を打ち立てた。第2次「光盤行動(皿を空にする)」である。

 政府の危機感を反映して、飲食業界の取り組みは、まさにバージョンアップである。「弁当・男女別」(道理にかなっている)「体重によるオーダー」(入店時に体重を測ってそれに合わせてオーダーする)「客が食べ残すと係の従業員が罰を受ける」「腹八分目くらいでオーダーをやめる」(某火鍋有名店では、野菜や麺などの廃棄率が高いという。つまり最後にオーダーする野菜や主食分をやめることによって、浪費を減らすらしい)「人数マイナス1のオーダーをする」「小皿料理を増やす」「余った食品を捨てずに、『焼餅(シャオビン)』など他の料理に再生する」(これは少々危険だが)…。どれもユニークだ。

 そうしたなかで懸念されるのが、行き過ぎた監視体制である。「自粛警察」ならず「光盤行動監視ボランティア」が出現した。中国近代史では、民間の相互監視体制が多くの悲劇を生んだことは記憶に新しい。光盤行動は基本的には良いことである。行き過ぎはともかく、いい面は日本でも積極的に取り入れてほしいと切に願う。

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