海外情勢

香港市民ら抵抗に苦心 国安法施行3カ月の国慶節デモ

 【香港=藤本欣也】中国の国慶節(建国記念日)に当たる1日、香港で行われた抗議活動はスローガンなき無言のデモ行進となった。市民の自由を制限する「香港国家安全維持法」(国安法)が施行されて3カ月。当局の締め付けが強まる中、市民はさまざまな抵抗を試みようとしている。

 香港メディアによると、警察は1日、約6千人を動員してデモを取り締まった。また、同日のデモは国安法違反の疑いがあると事前に警告し、市民に参加しないよう呼び掛けていた。

 それでも、黒いシャツを着て繁華街のデモ現場にやってきた女性会社員(23)は、「国安法が施行されて、自分の意見を自由に言えなくなった。しかし香港が中国のようになるのは嫌だから、できることをしたい。私にとってそれは(デモがあるときに)街に出ることです」と話した。

 職務質問する警官に抗議していた50歳の男性は、「香港人は臨機応変だから、国安法で中国や香港政府への批判ができなくなっても、新しい抗議方法を考える。私は、デモ現場で(反中報道で知られる香港紙の)蘋果(ひんか)日報を黙って読むつもりだ」という。

 6月30日の国安法施行後、同法違反容疑で逮捕されたのは9月末までに少なくとも28人(起訴は1人)。

 「香港独立」や「光復香港 時代革命」(香港を取り戻せ 革命の時代だ)の旗を持っていたり、海外に中国や香港への制裁を呼び掛けたりしたことなどが逮捕容疑となっている。

 著名な民主活動家で逮捕(その後、保釈)されたのは、蘋果日報の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏と、周庭(アグネス・チョウ)氏にとどまる。

 「国安法は脅すことに目的がある。抑止効果を狙ったものだ」。親中派勢力の重鎮で「全国香港マカオ研究会」の劉兆佳(りゅう・ちょうか)副会長が指摘するように、国際社会から激しい反発を招きかねない国安法による大量逮捕は起きていない。

 一方、香港社会では当局の狙い通り自主規制が進んだ。教科書から中国や香港の民主化運動の記述が削除され始めた学校では、愛国教育も加速している。

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