海外情勢

残り1カ月でコロナ感染 大規模集会のトランプ戦術に痛手

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領(74)が11月3日実施の米大統領選まで約1カ月のタイミングで新型コロナウイルスに感染していると確認されたことは、全米各地で大規模選挙集会を開いて支持基盤の活性化を図っていたトランプ氏には痛手となりそうだ。症状が重篤化しやすい65歳以上の「高リスク層」に属するトランプ氏の体調を心配する声も少なくない。

 米大統領選では、投開票直前の10月に突発的な出来事で選挙の流れが左右される「オクトーバー・サプライズ」が時に起きるとされるが、今回は現職の大統領がウイルス感染で自主隔離を強いられ、選挙運動が事実上中断される前代未聞のサプライズとなった。

 ホワイトハウスによるとトランプ氏夫妻は無症状だという。米メディアによれば、トランプ氏は太り気味であるものの目立った既往症はないとされ、直ちに症状が悪化する危険性は低いとみられている。

 トランプ氏と日常的に接触するメドウズ大統領首席補佐官は感染していないことが確認された。

 トランプ氏としては、約2週間の隔離期間を経て、15日に予定される2回目の候補者討論会には出席したい考えとみられる。

 トランプ氏に接触する政権高官や閣僚、報道陣らは直前にウイルス検査を義務づけられるなど、ホワイトハウスでは厳重な感染予防策がとられてきた。トランプ氏も最近はマスクを着用する場面が増えていた。

 現在までに感染経路は明らかになっていないが、感染症専門家の間では、トランプ氏が大統領選の行方を左右する激戦州で頻繁に実施する選挙集会が、感染拡大の温床と化しているとの指摘が出ている。

 これらの集会は屋外や風通しの良い場所で行われるものの、多数の参加者が集結して社会的距離が確保されず、マスクをしない者も多いためだ。

 政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた1日現在の両候補の全米平均支持率は、民主党候補のバイデン前副大統領が50・1%に対しトランプ氏は42・9%で、同氏は引き続き劣勢にある。

 トランプ氏は、大規模集会を通じて「コロナ危機克服」や「経済再生」に向けた楽観的なメッセージを発し、新型コロナ感染を警戒して大規模集会を避ける「穴熊戦術」をとるバイデン氏との差別化を図ってきただけに、トランプ陣営は選挙戦の最終盤で作戦の練り直しを迫られることになった。

 対するバイデン陣営は、感染拡大を一向に押さえ込めないトランプ政権のウイルス対策を大統領選の主要争点に据えて繰り返し批判しており、トランプ氏の感染を受けて批判攻勢をさらに強めるのは必至とみられている。

 一方でトランプ氏に対しては、国内外の各方面から快癒を祈る声明が相次いでいる。有権者の間でもトランプ氏に同情的な空気が強まり、同氏がむしろ求心力を高める可能性もある。

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