国土交通省がまとめた基準地価(今年7月1日現在)によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国平均が3年ぶりに下落に転じた。
旺盛な訪日客需要に支えられて上昇傾向をたどってきた商業地の下落が目立った。緊急事態宣言を受けて国内の経済活動も停滞したため、住宅地の下落幅も昨年より拡大した。
政府は新型コロナの感染拡大防止と社会・経済活動の両立を目指しているが、当面は訪日客の回復は期待できない。今後も厳しい状況が続き、それに伴って地価もしばらくは下落基調をたどるとみておく必要がある。
土地売買の目安となる基準地価は、全用途の全国平均が前年に比べて0・6%下落した。用途別では住宅地が0・7%、商業地も0・3%の下落を記録した。とくに東京、大阪、名古屋の三大都市圏で下落地点が増えた。
一方で三大都市圏よりも遅れて地価の上昇が始まった札幌、仙台、広島、福岡の中核4市では住宅地、商業地とも値上がりが続いた。国交省は「多くの地点で地価はまだ様子見の状況にある」とみており、新型コロナ問題の収束に時間がかかれば、地価の下落が本格化する事態も予想される。
訪日客の急増に伴い、都市部ではホテルや商業施設の建設が相次ぎ、それが全国平均の地価を押し上げてきた。だが新型コロナで旅行需要が一気に消滅し、商業地を中心に地価を冷やした格好だ。
一部の地域では海外の投資マネーが押し寄せ、不動産投資の過熱を招いていた。その急激な反動に警戒を怠ってはならない。
今後の地価の動きは不透明だが、テレワークの普及に伴い、都市部におけるオフィス需要は減少が見込まれる。その半面、ネット通販の拡大で物流施設の需要は大きく、都市部近郊に新たな物流拠点を設ける動きが強まっている。新型コロナによる社会情勢の変化を見極めたい。
ここ数年、主要駅に近いマンションを中心に販売価格は急騰してきた。今年上半期でも首都圏の新築マンション価格は、1戸当たり平均で6千万円を大きく上回っている。
販売価格に地価下落の影響は出ていないが、販売戸数は急減している。地価動向はマンション価格に直結するだけに今後の動向を注視したい。