専欄

習近平の2つのコロナ演説 重要なのは「国民の選択」

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 中国の最高指導者、習近平は先月、新型コロナウイルスとの闘いに関して、2つの重要な演説を行った。この感染症の制御に功績のあった個人や団体を表彰する大会での演説と国連総会での演説である。

 習近平は表彰大会での国民向け演説で、感染制御における「戦略的な成果」によって、(1)中国共産党の指導と中国の社会主義制度の顕著な優位性(2)中国人民と中華民族の偉大な力(3)中国の責任大国としての自覚-などが明確に示されたと強調した。

 国連総会での世界に向けた演説では、コロナの感染拡大は、(1)われわれが互いにつながり、苦楽をともにする地球村で暮らしていること(2)経済のグローバル化は客観的な現実で、歴史の潮流であること(3)人類は自己革命を行い、環境にやさしい発展・生活様式を確立する必要があること(4)グローバルガバナンス体系を速やかに改革、改善する必要があること-を啓示したと語った。そしていずれの演説においても、人類運命共同体の構築に向けて前進すべきだと訴えた。

 感染制御において、中国は武漢封鎖に見られる強硬な措置やハイテクを活用した管理・監視システムなどを採用して、いち早く成果を挙げた。それにより今年第2四半期の経済成長はプラスに転じ、通年でも世界の主要国では唯一、プラス成長が予測されている。

 コロナは各国の指導者や統治システムの危機対応能力を問う試練だった。それだけに、表彰大会の演説で真っ先に挙げたように、習近平は中国の制度、つまり「中国モデル」にいっそう自信を深めているだろう。

 昨秋の党中央委員会総会(4中総会)の決定は中国の制度について、(1)党の集中的・統一的指導を堅持することで、政治的安定が維持され、国は社会主義に向かって前進できる(2)人民の民主を発展させることで、人民に依拠した国の発展を実現できる-など13項目の優位性を挙げている。

 だが、国の統治システムが異なれば、危機に対応する措置や手法も異なる。いかなる措置や手法を採用するかは、安心・安全を確保するために自由や個人情報を国に委ねてもよいのか、どこまで委ねるべきか、という議論でもある。

 「コロナ後の世界」においては、中国モデルと西側モデルが優劣を競うことになるとみられる。重要なことはやはり、国民がいかなる統治システムを選択するかだろう。(敬称略)

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