生かせ!知財ビジネス

コロナ禍、創造的活動は止まっていない

 新型コロナウイルス禍で日本の知財はどうなるのか。世界知的所有権機関(WIPO)の前日本事務所長で、正林国際特許商標事務所の国際アドバイザーを務め、日本弁理士会執行理事でもある大熊雄治氏(弁理士)に展望を聞いた。

 --コロナで、世界が混乱している

 「国連が創設され75周年。第二次世界大戦後に世界のルールができ、世界秩序のサステナビリティー(持続可能性)を維持してきたが、今度はコロナ対全人類の闘いとなった。一緒に闘う姿勢が欲しいが、米中は対立。コロナ対策のフォーラムを作る国際的な動きはあるが、WHO(世界保健機関)で作った枠組みに両国が入っていないのは残念だ」

 --日本でも産学官で特許・技術の無償開放の動きがあるが

 「今回、医薬系の企業はあまり参加していない。エイズ、エボラ出血熱などが流行したとき、特許が話題になった。特許があるから薬価が高くなり、途上国の人が買えなくなるというわけだ。特許は出願後1年半で公開される。今はそれほど話題にはなっていないが、来年以降どういう仕組みができるか、注目される」

 --無償開放の動きには、独占排他性を持つ知財権としての特許の本質からは違和感があるとの声も聞くが

 「WIPO日本事務所ではWIPOグリーンを推進した。環境技術を途上国へ提供する国際的な枠組みだ。南北問題の文脈において知財制度は先進国寄りではとの批判を受け、WIPOは2013年から途上国を意識した事業を始めた。日本は公害を克服した経験があり、実は日本知的財産協会が働きかけた。日本から23社が参加している」

 --リーマン・ショック後、特許出願は大きく落ち込んだ

 「当時は特許出願件数が10%下がり、その後も回復せず、大企業の特許出願予算も減らされたままになり、研究開発費も数年間減らされた。今回は4、5月に前年同月比で10%以上落ち込んだ後、6月は前年並み(0.1%減)に回復し、7月は6.4%減だが踏みとどまった印象だ。発明が止まっているわけではない。特許出願を代理する特許事務所のテレワーク対応も安定化してきた」

 --今後、特許出願が回復していく可能性は

 「技術分野によると思う。コロナに影響されない業種。例えば、IT関係。コロナ禍で、企業、教育現場、医療現場などでデジタル化が一気に進んだのでは。こういう時は、個人発明家からも多くのアイデアが出てくる。例えば、アクリル板の仕切りやフェースシールド。こういった創造的活動は増える。もちろん、ワクチンなど医薬系も開発に全力を挙げている」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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