9月16日、ジャカルタ特別州の行政官のトップであり、正副知事、4人の副知事に次ぐ事務局長のポジションにいたサエフッラ氏(56)が新型コロナウイルス感染の末、亡くなったというニュースが飛び込んできた。
ジャカルタでは、「大規模社会的制限(PSBB)」を段階的に緩和する移行期に入っていたが、感染拡大が収まらず医療崩壊寸前であるため、同9日には移行期間の打ち切りと同14日からのPSBBの再強化を発表していた。経済重視の中央政府は、PSBBの再強化に否定的な態度を示していたが、サエフッラ氏の死で、人命最優先の政策に異論は出なくなった。同16日の段階で、インドネシア全体の感染者は22万9000人以上、死者は9000人を優に超えている。
PSBBの厳格化で特定11分野以外の企業は、オフィス勤務人数を定員の25%まで制限することが義務付けられ、罰則も設けられている。ジャカルタの移動制限による経済への影響は否めない。しかし、医療の完全な崩壊の前に、まずは踏みとどまる必要性を今は多くが受け入れているようだ。
有能人材集めた結果
サエフッラ氏の死とPSBBの再強化を受け、ジャカルタ特別州のコロナ対策を担う担当官に注目してみると、興味深いことにほぼ全てが女性であることが分かった。正副知事が選挙で役職に就くのに対し、知事の推薦の下、大統領によって任命される4人の副知事が存在するが、4人のうち2人は女性である。その次の事務局長だったのがサエフッラ氏であるが、彼の暫定的な後任として働いているのも女性、そして、その下のさまざまな部署、特にコロナ対応の部署のリーダーは40代の女性たちである。
アニス知事の秘書が言うには、たまたま能力の高い人を集めたらほとんどが女性だっただけで、全くジェンダーバランスは考えていなかったという。ジャカルタ特別州の中では、60歳以上は既に非常に年配だという認識があるとも言っていた。与党である自民党三役を含め新たにスタートした現体制は「5G(爺)政権」だと揶揄(やゆ)されている日本とは大違いだ。
寄り添う政策期待
コロナ禍で、力強く国民を引っ張っていくのではなく、科学に基づき冷静に判断し、対話を重視し、寄り添うタイプのリーダーが求められるといわれる中で、ドイツ、台湾、ニュージーランドなどの女性の政治リーダーシップが注目されている。女性のリーダーがコロナ対策に有効かはともかく、新しいリーダー像が各地で見られ、女性が活躍しているのは確かなようだ。
ジャカルタはアニス知事の下、能力重視の任命で女性が登用された。感染拡大を防げているわけではないが、中央政府の対応に比べ、おおむねジャカルタ特別州のコロナ対策に対する国民からの支持は高い。PSBBの再強化でさらに経済問題が深刻化する中で、どのような新しい策を提示するのかも含め、各部署で女性たちが活躍し、人々の不安に寄り添う政策を掲げ、コロナ感染拡大に歯止めをかけてほしいものである。(笹川平和財団 堀場明子)
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