海外情勢

「ワクチン完成ならトランプ」 米大統領選、コロナ禍に揺れる有権者 (1/2ページ)

【米大統領選・現場をゆく】(中)

 米共和党のトランプ大統領(74)は11月3日の大統領選に向け、新型コロナウイルス流行で打撃を受けた経済活動の再開を訴えてきた。そのトランプ氏が感染したことは、感染症対策と経済を動かすことの両立がいかに難しいかを露呈させた。

 ワクチンへの期待

 民主党候補のバイデン前副大統領(77)はトランプ氏が経済活動の再開を急ぐあまり感染防止に消極的だとし、「人命軽視」と批判してきたが、有権者には景気を後回しにすることへの警戒感も根強い。

 「新型コロナのワクチンが完成すれば、トランプ氏に投票するだろう」。首都ワシントンの中心市街地にあるドラッグストアに季節性インフルエンザの予防接種を受けにきた配管工、エリック・マーフィー氏(47)がそう話した。

 黒人のマーフィー氏は民主党支持者で、前回大統領選では同党のクリントン元国務長官に一票を投じた。バイデン氏に投票するつもりだが、ワクチン開発に成功すれば党派を超えてトランプ氏を支持するという。「妻と子供2人を養うため仕事を続けられることが何よりも大事。ワクチンがあれば感染を恐れず仕事ができる」と考えるからだ。

 感染者が急増した今春以降、全米で外出制限や営業禁止が実施され、4月の失業率は戦後最悪の14・7%に。感染拡大は止まらず、経済活動の全面再開は見通せない。だが、ワクチンが完成して接種できるようになれば、状況は劇的に改善されるとみられている。

 トランプ氏にとり、ワクチンの完成は経済活動を再開する起死回生の策だ。しかし、国民に行き渡る数を確保するのは来年後半以降との見方が支配的。それまで感染症対策が維持され、景気回復が遅れれば商業活動には重荷となる。

 難局にある事業者

 ワシントンのビジネス街で韓国料理店を経営するケビン・リー氏(50)は「新型コロナ危機には誰が対応しても難しかったのではないか」と語り、複雑な心境をのぞかせる。

 客が20人も入れば満席となる小さな店だが新型コロナ流行前は繁盛し、従業員7人を雇った。だが在宅勤務で客足が減り、3~7月は休業。従業員を1人に減らして8月に再開したが、売り上げは以前の1日平均3500ドル(約37万円)から数百ドルに急減した。

 頼りは政府の支援だ。休業補償として支払われた一時支給金と小規模事業者向け融資で難局をしのぐ。

 米政府は3月、中小企業の給与支払いを肩代わりする特例融資制度を盛り込んだ総額2兆2千億ドル(230兆円)の経済対策を成立させた。家計への現金給付や、失業給付の増額も実施し、経済への悪影響を抑えようとしてきた。

 だが、こうした対策は7月末から順次、期限切れを迎え、中小事業者団体の全米独立事業者連盟(NFIB)は9月、政府による支援継続を求める声明を出した。すでに倒産は高水準で推移していたが、事業を継続する中小事業者も「20%超が経営をあと半年続けられると考えていない」とアンケートで判明したからだ。政府は追加対策を急ぐが景気は綱渡りの状態だ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus