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市内に35体以上…大阪の「ゆるキャラ」は存続か“リストラ”か

 大阪市を廃止し4特別区に再編する大阪都構想の住民投票をめぐり、市の部局や24行政区の「ゆるキャラ」の行く末にも注目が集まる。あくまで賛成多数となればの話だが、それぞれの広報活動のため制作されたゆるキャラの存在意義は特別区設置で大きく揺らぐ。存続か、それとも“リストラ”か。ゆるキャラの未来も市と同じ道をたどるかもしれない。(尾崎豪一)

 市内に35体以上

 「10月12日告示、11月1日投票日の日程で行われるキョン!」

 大阪市選挙管理委員会のツイッターでは、鉛筆形のとんがり帽子をかぶった「センキョン」が住民投票をPRする。

 区民まつりなどの地元催事に着ぐるみで登場したり、広報紙で事業を紹介したり…。ゆるキャラは、自治体の広報にとって、市民に親しみをもってもらう役割を担う貴重な存在だ。大阪府のホームページ(HP)で確認すると、市や区役所には35体以上のゆるキャラがいる。

 市財政局の「税田ニャン吉先生」や市建設局の「大ちゃん」といった部局に加え、男女2人組ユニットの「のんちゃん・すーちゃん」(北区)や、花がモチーフの「みなりん」(港区)、「いくみん」(生野区)など行政区の24区全てで制作されているという。

 最も古いのは平成8年生まれの西成区の「スーパーポンポコジャガピーにしなりくん」。独自グッズも展開しており、担当者は「区民に親しまれる存在だ」と話す。

 知名度不足も

 ただ、これら大半のゆるキャラは知名度が高くないという現状がある。

 10月上旬、岩手県で決選投票が行われたご当地キャラ日本一決定戦「ゆるキャラグランプリ2020」。ベスト10に大阪府内の3体が入ったが、大阪市からの参加は市立男女共同参画センターの「ジャンプちゃん」のみ。ご当地部門にエントリーした約400体のうち180位だった。

 府のゆるキャラを紹介するHPを管轄する府魅力づくり推進課の担当者も「課の担当になるまで、大阪市内にこんなにキャラがいるとは知らなかった」と明かす。

 「詳細は未定」

 こうした大量のゆるキャラは、都構想の制度設計ではどうなると規定されているのか。

 都構想の協定書(設計図)によると、現在の24行政区にある区役所の名称は特別区になっても継承され、各種証明書交付などの窓口サービスなどは維持されることが決まっている。

 ただ、ゆるキャラについて担当者は、「広報事務は引き継がれるが、ゆるキャラまで引き継がれるか、現時点で詳細は未定だ」と説明する。一方で「特別区へ移行する準備の過程で、ゆるキャラの取り扱いは変わるかもしれない」とリストラの可能性も示唆する。

 現在の「ゆるキャラ」が存続するのか。それとも、特別区ごとの新たなゆるキャラが誕生するのか。都構想の是非が決着してからの論争になりそうだ。

「盛り上がる工夫を」

 近年「ゆるキャラ」は各地で次々と誕生したが、PR効果を疑問視する声もあがっている。大阪市内でも35体以上のゆるキャラがあり、自治体広報に詳しい北海道大大学院の北村倫夫教授は、「盛り上げるには行政側の工夫が欠かせない」と強調する。

 工夫の一つが、統一化だ。北村氏は「複数のキャラを一本化すれば効率よくPRできる」と指摘する。

 大阪府のゆるキャラとして活躍中の「もずやん」は平成26年当時、30体以上が乱立していたゆるキャラを統一する形でできた。今では広報担当副知事となり、多くのメディアで取り上げられてブレーク。30年度の府民知名度は66・8%を記録した。

 住民投票で大阪市の特別区移行が決まった場合、現在のゆるキャラはどうすればいいのだろうか。北村氏は、「ただのリストラは二番煎じ。住民が『選挙』で選んだ5体程度でユニットを組むなど、盛り上がる工夫をしてみては」と提案している。

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